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『大正時代:記録を記憶に残したい』 山口謠司

大正時代:記録を記憶に残したい

山口謠司(やまぐち ようじ)

 大正は短く15年しかありませんでした。でも、様々な新しいものが生まれ、新しいことが始まった時代なのです。

 

〇大正7年 松下電気器具製作所(現在のパナソニック)が二股ソケット発売。
 当時は「一戸一灯制」で、電気の供給口は1つしかありませんでした。つまり、電灯をつけてしまえば、それ以外のことに電気を使うことができないのです。それを打破した「二股ソケット」は偉大な発明だったのです。現代のように自由に電気が使えるようになった、きっかけがこの製品だったんですね。

 

〇大正6年 イギリス皇太子 エドワード・アルバート(のちの国王エドワード8世)来日
 帝国ホテルに滞在されていたのですが、火事でホテルが焼失。幸い外出中だったので難は逃れたのだそうです。エドワード8世は王冠を賭けた恋で、わずか325日で退位されたので有名な方。退位後、弟のヨーク公が「ジョージ6世」となりました。彼の長女が現在のイギリスの君主エリザベス2世です。

 

〇大正14年 ラジオ放送開始
 それまでのメディアは新聞や雑誌など紙媒体しかありませんでした。ラジオの誕生は画期的なものです。瞬時に情報を伝えられるし、字が読めない人にとっては欠かせない情報源となったのです。

 

〇大正9年 日本初のターミナルデパート設立計画(小林一三 阪急デパート)
 小林一三はデパート内に食堂を作り、そこではライスだけ頼むことができ、ソースはかけ放題でした。最初は少額しか使えなかった人も、お金を稼げるようになったら、また来店して多額の買い物をしてくれると信じていたのだそうです。この作戦は大成功でした。

 

〇大正13年 関東大震災
 災害に対応した町づくりの一環として東京に近代的な三大公園(墨田公園、浜町公園、錦糸公園)が作られ、横浜に山下公園が作られました。

 

 明治と昭和が長かっただけに、あっという間だったと思われがちな大正時代ですけど、けっこういろんなことがあったんですね。大正時代に第一次世界大戦はありましたけど、主にヨーロッパでの戦争だったので、日本で暮らす人たちにとっては平和な毎日という感じだったのでしょうね。でも、この戦争をきっかけにアジア進出を始めた日本は、第二次世界大戦で大敗を喫するわけです。

 こういう歴史って大事なのに、学校で教わった日本史にはちっとも出てきませんでした。知らないというのは実は怖いこと。大正時代のことを振り返ってみると、今の時代とちょっと似てるような気もします。

 その時にはわからなかったけど、後になって「ああ、あれが始まりだったんだ」って悔やまないようにしないとね。

1934冊目(今年239冊目)

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