『白い病』 カレル・チャペック
50歳前後の人の身体に突然、大理石のような白い斑点ができる病気が流行り始めた。白くなった部分は感覚を無くし、それは全身に広がり、次第に腐っていく。その恐ろしい病気に人々は恐れおののくのです。
当時の50歳はかなりの老人という年齢で、社会の重要なポストを担っている人が大勢この病気にかかり、亡くなっていきました。老人たちの中には病気を恐れ家に閉じこもってしまう人もいました。でも、この病気を良いものとして考えている若い人もいました。彼らがいなくなれば、自分たちにより良い仕事や地位がまわってくるのだと。
突然、この病気を治すことができるという医者が現れたのです。でも、彼は貧しい人しか看ないというのです。そうでない人が看て欲しいといっても、ある条件を飲まなければ治療しないというのです。
その条件とは「戦争をやめること」だったのです。
チャペックがこの戯曲を書いたのは1937年。第二次世界大戦前夜の時代です。
この「白い病」が治ったとしても、戦争で死んでしまったら、意味がないじゃないかというとても重いメッセージがこの戯曲に込められています。
新型コロナが猛威を振るっている今、このメッセージは再び重い意味を持ちました。コロナを抑え込むことができたって、他の理由で死んでしまったら元も子もないじゃないか!
貧困、いじめ、失業、差別、欲、無関心、そういう毒で死んでしまう人が増えてしまう現実を、本当に考えているんですか?
自分と、自分のお友達だけが潤えばいいと思っている人に、この世界を託したままでいいんですか?
そんなことを強く感じました。
1979冊目(今年284冊目)
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