『空気が読めなくても それでいい。非定型発達のトリセツ』 細川貂々 水島広子
前作「生きづらいでしたか?」で、自己肯定感の低さについて語っていた貂々(てんてん)さんですが、この本は、もしかしてその原因なのかもしれない「非定型発達」についてのお話です。
発達障害まではいかないけれど、色々な場面で生きていくのが難しいと感じることがたくさん生じてしまうのが「非定型発達」なのです。(非定型発達とは、脳の発達の仕方の偏りがあり、色々な生き辛さに繫がる特徴がある先天的な変異のことです。)
世の中の大勢を占めているのは「定型」の人たちです。定型の特徴は「気まぐれ」「ルールが見えない」「ルールを破る」「いい加減」「雰囲気を察する」で、動物でたとえると猫っぽい感じです。
一方「非定型」は「ルールを学ぶ」「ちゃんと守る」「真面目」「空気が読めない」で、動物で例えると犬っぽい感じです。
非定型さんは、とことんルールを守るタイプだし、空気が読めないので、正論を言います。例えば「わたし太ったかしら?」と友達に聞かれたら、「そうね、太ったわね」と答えます。ところが「定型」の友達はそういう回答は期待していません。「そんなことないわよ」とか「気のせいよ」という答えを求めてくるのです。
そういう空気とか気づかいとかが理解できない非定型さんは、「キツイことを言う人」とか「遠慮がない」とか言われてしまうのです。そして、どうしてそんな評価を受けるのかがわからないけど、またそんな風に言われるのは嫌なので、黙ってしまったり、友達と会わなくなってしまったりしてしまうのです。
正直でルールを守る非定型さんのことを分かってくると、定型の人たちって酷いよねぇということも分かってきます。ルールを守ることを「杓子定規」だと非難したり、正直な発言を「口が悪い」と言われるのは、確かに理不尽な話です。そして、非定型さんを矯正しようとする人もいて、無理矢理に「あいまいが良い」とか「本音と建前」とかを押し付けようとしてくるというのは、非定型さんにとっては迷惑な話です。
でも、世間では定型の人たちの方が多いから、その中を上手く生きていくコツみたいなものを水島先生が解説してくれています。程度の差こそあれ、非定型さんは世の中に大勢いて、いろんな悩みを抱えて生きているんですねぇ。
「なんで自分は普通にできないんだろう」「自分はダメな人間だ」と勝手に思い込んでしまっていることが多いというのは残念な事実です。自分は世間の人とはどうも違うみたいだなぁって思うことがあったら、この本を読んでみてください。もし当てはまることが多かったら、あなたは非定型さんかもしれません。それを知ることができたら、それだけでも気持ちが少し軽くなるかもしれませんね。
#空気が読めなくてもそれでいい #NetGalleyJP
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