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『利他のすすめ』 大山泰弘

利他のすすめ

大山泰弘

 この本のタイトルを見た時に、初めて目にする言葉だなと思いました。でも「利他」という言葉が「利己」の反対の意味なんだろうな、自分のためではなく、誰かのために行動するということなのだろうなと感じたのです。

【利他】(デジタル大辞泉(小学館)より)
1 他人に利益となるように図ること。自分のことよりも他人の幸福を願うこと。
2 仏語。人々に功徳・利益 (りやく) を施して救済すること。特に、阿弥陀仏の救いの働きをいう。

 

 大山さんはチョークを作る会社の社長さんです。ある時、知的障害者を会社で雇用してくれないかという話があったのです。障害者を雇用することに不安を感じた大山さんでしたが、養護学校の先生が熱心に頼んでこられるので、2週間の職業体験という条件なら受け入れましょうということになり、2人の少女がやってきました。

 最初は、なかなか仕事が上手くできませんでしたが、少しずつ仕事に慣れ、無事に2週間の体験期間が終わりました。その時に、2人の面倒を見ていた社員から、あの子たちを雇ってくださいという声が上がったのです。わたしたちがちゃんと面倒を見るから、2人と一緒に働きたいというのです。

 大山さんは、障害者の少女たちがなぜ働きたいのかが理解できていませんでした。施設にいれば、外の世界で働くよりずっと楽じゃないかと思っていたのです。2人が一生懸命に働くのは何故なのだろうと、あるご住職に質問してみました。すると、こんなことをおっしゃいました。

人間の幸せは、ものやお金ではありません。
人間の究極の幸せは次の四つです。
人に愛されること、
人にほめられること、
人の役に立つこと、
そして、他人から必要とされること。
愛されること以外の三つの幸せは、働くことによって得られます。
生涯を持つ人が働こうとするのは、
本当の幸せを求める人間の証なのです。

 それ以降、大山さんは積極的に障害者を雇用していこうと決めたのだそうです。

 

人のために動くから、「働」と書く。

 自分は何のために働いているんだろう?自分は何のために生きているんだろう?と、自分を見失ってしまうことが多い今の世の中。身体の健康はもとより、心の健康を失ってしまう人が多くなっています。

 大山さんは、障害者の方々と仕事をすることによって、いろんなことを学んだのだそうです。彼らが何かをできないのは、彼らが悪いのではなく、彼らがそれをできるようにしない、こちら側の問題だと気付くことがたくさんあったとおっしゃっています。

 何か不都合があった時に、相手が悪いと考えるのは簡単です。でも、その原因は自分の側にあるのではないかと考えること、それが重要です。もし、相手が文字を読めないなら、文字ではなく絵にすれば伝わるのではないか?ある道具が使えないなら、別の道具を使えばいいのではないか?それを考え、工夫するのが自分たちの務めなのだと考えたら、世の中の不便なことはかなり減っていくでしょう。

 障害者も健常者も同じ人間なのだ、それぞれ少しずつ違う個性を持った人間なのだと考え、力を合わせて生きていく社会。そういう社会なら、喧嘩も差別も戦争もなくなっていくのだろうなと思います。

 

 ついつい目先の便利さに溺れてしまいがちな日常ですけど、利他の心を忘れないようにして生きていきたいです。

1958冊目(今年263冊目)

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