『まち』 小野寺史宜
瞬一の両親は小学校3年生の時に火事で亡くなってしまいました。その後は歩荷をしていたじいちゃんに育てられてきました。高校を卒業しても特に何をしたいということもない瞬一でしたけど、じいちゃんの勧めで東京で暮らしてみることにしました。
家賃が安いのと、川が近くにあるのが気に入って平井のアパートに住むことにしましました。最初はコンビニのバイトをしていましたが、友達に誘われて、今は引越のバイトをしています。
瞬一くんは、だれ一人知らない町で暮らすことになったのですが、いつの間にか友達や知り合いが増えてきました。隣の部屋の女の人に虫を退治してくれと頼まれたり、バイト先で働きを褒められたり、少しずつ自分の価値のようなものを感じるようになってきました。
淡々とした話なんだけど、こんなことで人間は悩むんだよなぁって思うことがいろいろありました。今はバイトだけど、正社員として働けるように頑張るべきなんだろうか?自分はこれからどう生きたらいいんだろう?友達や知人との距離感はこれでいいんだろうか?そういうことって、意外と誰にも相談できない部分なのかなって思います。
自分を育ててくれたじいちゃんの生き方がカッコいいなぁっていう瞬一の思いが、彼の一本筋の通った考え方の基礎になっているのかなと思います。こういう青年なら、みんなから愛されるだろうなぁ!
物語の舞台となっている土地が、わたしが住んでいる所の近くなので、あの川のそばを歩いているんだとか、あの図書館ね、あの土手ねなんて思いながら読めて、とても楽しかったです。こんな風に地元の土地を描いてもらえるのって嬉しいなと思いました。
1975冊目(今年280冊目)
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