『あるノルウェーの大工の日記』 オーレ・トシュテンセン
ノルウェーで大工をしているオーレ・トシュテンセンさんが、ある家の屋根裏部屋の改築を依頼され、それを完成させるまでの日記です。
リノベーション工事を頼むとき、日本だったらある業者に頼んだら、そこが設計から施工まで一気に引き受けるという形式がほとんどですが、ノルウェーではそこの考え方からして違うのにびっくりしました。設計事務所に頼むのは図面だけで、実際に作業をする大工さんは別に頼むという形式なのです。何人かの大工さんに見積もりを出してもらって、その中から施主が予算や大工さんの人柄やらを見比べて誰に頼むのかを決めます。
見積りに関しては日本でも同じですけど、値段だけで決めたらだめだよってオーレさんは何度も言っています。材料費があって、作業する人の工賃があって、見積もりや折衝のための時間にもお金はかかるのだということを理解していない人が多過ぎるとオーレさんは歎いています。闇雲に値切ったら、その分はどこかが減らされるのだということを施主は知るべきです。
ノルウェーでも外国人労働者が大勢働いていて、確かに外国人を使えば安くできるかもしれないけれど、それでいい仕事を期待しちゃダメだよねというあたり、いずこも同じだなって思います。
施主がイケアの家具を使いたいという話を持ってきたけれど、それよりも大工さんが注文に合わせて作る家具の方がずっといいよと、オーレさんが施主を説得するところに、職人の自負を感じました。最終的には施主も大工さんに作ってもらって良かったと満足してくれました。こういう信頼関係が次の仕事につながるのだというオーレさん、腕に自信がある人の考え方ですよね。
オーレさんが気の合う職人さんたちと力を合わせて、真剣だけど楽しく仕事をしている感じがよく伝わってきました。
屋内の仕事であっても、冬には気温がマイナスになる環境で働く大工さん。大変だけどやりがいのある仕事だから、これからもずっと続けていくのでしょうね。そして、オーレさんのようなしっかりとした仕事をしてくれる大工さんに巡り合えた施主さんは幸せです。
こうゆう大工さんの日常を知ることは、仕事をお願いする側にとっても大事な知識になります。金額だけを重視することの愚かさや、働く人たちの考え方、彼らとのコミュニケーションの取り方など、いろんなことがわかります。
この本は世界14か国で翻訳されています。世界中の人に共感される内容だということでしょうね。
1957冊目(今年262冊目)
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