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『戦地の図書館』 モリー・グプティル・マニング

戦地の図書館
海を越えた一億四千万冊

When books went to war:
The stories that helped us win World War Ⅱ  

モリー・グプティル・マニング
Molly Guptill Manning

松尾恭子 訳 

米国

第二次世界大戦終結までに、ナチス・ドイツは発禁・焚書によって一億冊を超える書物をこの世から消し去った。対するアメリカは、戦地の兵隊たちに本を送り続けた―その数、およそ一億四千万冊。アメリカの図書館員たちは、全国から寄付された書籍を兵士に送る図書運動を展開し、軍と出版業界は、兵士用に作られた新しいペーパーバック“兵隊文庫”を発行して、あらゆるジャンルの本を世界中の戦地に送り届けた。(書籍紹介より)

 アメリカ陸軍は、兵士たちのために本を戦場に送るという作戦を行いました。最初はすでに出版されている本を大量に購入したり、広くアメリカ国民に本の寄付をお願いしました。そして多くの本が集まり、戦地へと送られました。しかし、一般的な書籍は大きくて重く、戦場に持っていくには都合が悪かったのです。

 そこで、ペーパーバックのような小型で軽い本を作ることになったのです。これは軍服のポケットにすっぽり入るサイズで、兵士たちは戦地での休息の時間に本を手軽に読めるようになったのです。この本は兵隊文庫と呼ばれました。

 

特別業務部は、兵士が喜ぶ物資を、イギリス本土の終結地を覆い尽くすほど大量に用意した。兵士は、タバコの箱を幾つもポケットに突っ込み、スナックバーをひと掴み取った。しかし、兵士が何よりも欲しがったのは兵隊文庫だった。特別業務部の士官が述べているように、終結地では緊張感が高まっており、「兵士には、気晴らしがどうしても必要だった」。多くの兵士にとって、読書が唯一の気晴らしだった。(本文より)

 戦地にはタバコやチョコレートと一緒に本が送られました。届いた本を、兵士たちは争うように手にしたのだそうです。自分が読みたい本が手に入らなかったときには、それを入手できた兵士に、読み終わったら自分にも読ませてほしいと頼み、自分が読み終わった本は別の兵士に譲ったりしたりしていたそうです。

 戦地という極限状況でも、ほんのわずかな時間でも、祖国での自由な時間を思い出したり、物語に心を躍らせたりすることで、かろうじて平常心を保てたのです。そして、がんばろうという気持ちも湧いてきたというのです。

 ある兵士は敵軍(日本軍)がすぐそばを通過していく中、塹壕の中で覚悟を決めて兵隊文庫を読んでいたのだそうです。そうすることで恐怖を忘れ、時間が経つのを忘れ、彼は生還したという話にはビックリしました。

 兵士を人間として扱うからこそ、兵隊文庫という考え方が生まれたアメリカと、無駄死にを何とも思わなかった日本では、戦争の勝敗は当然のことなのだと思います。

 あの「グレート・ギャツビー」が兵隊文庫で再評価されてベストセラーになったということを、この本で初めて知りました。兵隊文庫から読書する楽しみを知ったアメリカ人たちが、それまでより多くの本を読むようになったというのも、凄いことだと思います。

 そして、兵士たちが国に帰ってから、職業訓練のために学校へ戻ることを支援する制度を作ったというところも素晴らしいと思います。

 現在も、何年か軍隊で働くと大学へ進学するお金が支給される制度がアメリカにはあります。その制度で大学へ行っていた友達が語った、若い頃には勉強なんて興味なかったけど今の歳(当時36歳)になって勉強の大事さを感じてるよという言葉を思い出しました。

1982冊目(今年2冊目)

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