『時が止まった部屋 遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし』 小島美羽
それまでは作業写真を使って自分たちの仕事や孤独死の問題を来場者に説明していた。生々しい部分が見えないように配慮して選んでいるとはいえ、実際に孤独死が起きた現場の写真を使うとみる人にショックを与えてしまうし、故人を晒し者にしてしまうことになるのではないか、遺族にも悲しい記憶を思い起こさせてしまうのではないかという心配があった。(本文より)
小島さんが孤独死した人の部屋のミニチュアを作るようになったのは、葬祭業界の展示会「エンディング産業展」がきっかけだったのだそうです。
ミニチュアとはいえ、人が亡くなった部屋という雰囲気は強烈に伝わってきます。布団の周りに必要なものが集められていて、最後はちょっと動くのもおっくうになっていたんだろうなと想像できたり、人が死んで時間が経ってしまうと、腐敗が進んでこんなことになってしまうのかということが具体的に分かるのです。
病気などがあって、少しずつ具合が悪くなって亡くなった方もいるし、急病で突然亡くなった方もいて、「わたしはこんな風にはならない」なんて絶対に言えないなと思います。そして驚くことに、孤独死とは一人暮らしだから発生するものではないということなのです。同居する家族がいても、家族と余り顔を合わせずに暮らしている人だと、何週間も亡くなったことに気づかれずにいることもあるのだそうです。
もう一つ驚いたのはペットのことです。飼い主が亡くなって一緒に亡くなってしまった子たちもいるし、たとえ生き残っても、ペットたちは見つけた人達が何とかしなかったら殺処分になってしまうというのです。それは余りにも酷い現実です。
亡くなった方の遺族が、故人と自分とは関係ないからと言って部屋の清掃代を払ってくれなくて大家さんがその費用を負担したり、逆に大家側が法外な費用を吹っかけてきて遺族が困ってしまったりということもあるのだそうです。こういう事態のために大家さんが入る「孤独死保険」というのもあるのだそうです。
そして、部屋の清掃をしている時にやってくる「知人」という恐ろしい人たちにビックリしました。個人と仲良くしていたから形見にこれを持って行くわと金目の物を持って行ってしまったり、賃貸の物件なのにこの畳きれいだから貰っていい?と聞かれたり、亡くなった人の家から勝手にものを持って行ってしまう輩が多いってどういうことなんでしょう?こういう人たちは故人に対する敬意なんて全くないのでしょうね。
ビックリするばかりのお話が続きます。でも、こういうのって決して他人事じゃないんです。自分が、自分の家族が、こういう事態にならないように、でもこういう事態になってしまったらどうすればいいのか。知っておくべき現実なのです。
そして、孤独死の現場を片付けてくださる方たちに敬意を表したいと思います。
1991冊目(今年11冊目)
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