『モヤモヤそうだんクリニック』 池谷裕二 ヨシタケシンスケ
都内国立大附属小学校の児童たちから寄せられた「モヤモヤすること」について池谷先生が答えています。
「頭がよくなる薬はありますか?」とか、「ぼくの「やる気のスイッチ」はどこにあるんでしょう?」「心って人間のどこにあるんですか?」などなど、なかなかの難問が並んでいます。子どもたちは素直にこういう質問を寄せてくるけど、大人だって本当は同じはず。なのに、大人になると、こういうことをなかなか考えなくなってしまうのは何故なのかしら?分かった気になっているのか?分からないから諦めちゃったのか?
本当に分かるかどうかは置いておいて、疑問を持つっていいことだと思います。何故なんだろうって考えることから、きっと何かが見つかるはずですもの。モヤモヤした気持ちを持ったまま寝られなくなっちゃうより、調べすぎて疲れて寝ちゃう方がいいと思うな。
「どうしても本を好きになれません。どうしたら本を好きになれますか?」という質問に「まだ好きだと思える本に出会ってないからだよ」と池谷先生は答えます。そして、こんな言葉を教えてくれました。
書籍は青年には食物となり、老人には娯楽となる。病めるときは装飾となり、苦しいときにはなぐさめとなる。内にあっては楽しみとなり、外にもって出てもじゃまにはならない。とくに夜と旅行と田舎においては、良い伴侶となる。(キケロ)
勉強したり、教わったりした知識とは「入力」されただけの知識です。それをいかにして「出力」するのか。そこが問題だと池谷先生は何度も語ります。丸暗記して、ただ頭の中に入れただけの知識なんて何の役にも立たない。それを応用したり、自分でやってみたい、誰かに教えたい、と思わなかったら自分のものにはならないのだと。
もうすぐ死んでしまう人は「生きたい」って思うし、生きている人はたまに「死にたい」って思う。
自分とちがうせかいが気になるのは、人のクセなのね、きっと。(ヨシタケシンスケ)
これは、なかなか深い言葉だなと思います。元気な若い人は何かに挫折して死にたいというけれど、もうすぐ死にそうな人は生きたいと思う。これを知るだけでも、死生観はかなり変わるはずです。身近な人の死によって、自分の生を考えるということが減っているのが今という時代なのかなと思いました。
番外編として、様々なモヤモヤが巻末に並んでいました。その中で一番気になったのがこれです。
大人はなんで子どもをしたがわせようとして、したがわないと怒るんですか?なんで大人の方が偉いんですか?(5年生)
子どものころ、みんなそう思ってましたよね。でも、これに対するちゃんとした回答をしてくれる大人ってなかなかいません。それは危険だからやってはいけないんだよとか、子どもに分かるように丁寧に説明してくれない大人って、きっと大人に対しても説明できないのでしょうね。そんな大人って嫌だって思いながら自分も大人になってしまうのって、負のスパイラルだなと思います。
わたし自身、大人になってから母親に「子どものころにこんなことを言われて嫌だった」と言ったら「あら、そんなこと言ったかしら」って返事されて、ガックリした覚えがあります。大人って身勝手だもんね(汗)
子どもたちの様々な質問に真面目に答えていくためにも、大人の皆さん、この本を読んで勉強しましょう。
そして、子どもたちがモヤモヤした気持ちを持ってしまうのは、ほとんどが大人のせいだってことを理解しないとね。
1993冊目(今年13冊目)
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