『阿川佐和子の世界一受けたい授業』
阿川さんは週刊文春で多くの方と対談されてきました。その中から14人の方との対談をまとめてこの本になりました。
そもそもこの本を読もうと思ったのは「聞く力」の中で、阿川さんがデーモン閣下に「ヘビメタとはなんぞや?」と質問をしたという文章があって、それは凄い質問だなぁと思っていたのです。その時の対談がこの本に納められていることがわかり、読んでみました。
簡単にいうとね、様式美の要素が盛り込まれないとヘヴィメタルとは認定されないんです。~中略~ ハードロックに様式を持ち込むとヘヴィメタルになる。(閣下)
そうだったのか、じゃ、知的じゃん。(阿川)
知的ですよ。だけど保守的ですよ、ヘヴィメタルは。(閣下)
私、逆にハチャメチャなのかと思ってた。(阿川)
それはパンク。速くて激しいけど、(わざと調子外れに)♪うまく歌ったってしょうがないじゃん。俺たち~、だいたい上手に歌うことに何の意味があるんだ~、という。だけど、ヘヴィメタルは上手じゃないとダメ。(閣下)
閣下、説明がとてもお上手!
ハードロックに様式美を取り入れたヘヴィメタルは歌舞伎とかオペラとかに近いセンスのものなんだってことが良くわかります。だから保守的なんだよっていうこともよーくわかってらっしゃる。
インタビューや対談の時にプロフィールの文章を必ず閣下が自ら書いているのだそうです。そうかぁ、他人に書かれるととんでもないことを書かれそうだしね、いろんなこだわりがある閣下らしいエピソードだと思いました。
間違いなく下山の時代に生きている。それを登山中だと錯覚しちゃいけない。(五木寛之)
これは2012年の言葉ですよ!この段階で日本は下山しているところだと五木さんははっきりおっしゃっています。
日本は先進国である。経済は右肩上がりでなくてはならない。そういう妄想に囚われているから、何でも経済ってものさしで見ようとするんだなぁ。急な坂を下るのではなく、緩やかに下る方法を考えなければならない日本の現状を認めることから始めないと、世の中の不都合は何一つ良くなっていかないのだなと痛感しました。
私はこう考えているんです。結局は、リーダーシップの不在なんだと、日本の直面している問題は、経済的な問題ではなく、政治家の指導力の問題なんです。国際社会における精神的な自立を果たさなければ、日本は変わることができない。でも実際はどうですか。相変わらずのアメリカ依存と中国への精神的隷属(李登輝)
ひとつはね、制度の問題。私はいつも言うんです。国のトップは国民が選ぶべきだと。(李登輝)
直接選挙で。(阿川)
そう、アメリカの大統領も台湾の総督も直接選挙で選ばれるでしょう。(李登輝)
これも2012年のお言葉です。リーダーシップを取れない政治家って国民にとって全く意味のない人です。利権でしかものを考えない人がトップに立つような国は滅びるか、どこかの国の属国になるしかないですね。
テレビでも「今回司会をやらせていただきます誰それです」と自己紹介するでしょう。どうもその裏に、「いま私がこうしているのは自分の意思ではなくて、人から命令されて、あるいは頼まれて『させていただいて』いるんです」というニュアンスが感じられしょうがないんですよ。なんだか、自分は責任をとりません、 と言われているようで。(村上龍)
最近特にひどいと思うのは「立ち上げる」「新しい施設を立ち上げる」なんて、そんな言葉があり得るわけない。自動詞と他動詞を滅茶苦茶に混同してるんだもの。(阿川弘之)
阿川弘之、村上龍、阿川佐和子の三者対談の中で、日本語について様々なことが語られているのですが、いまどきの日本語の変化について「それはまずいだろう」ということが多く語られています。
誰かが大きな声で言い出すと、それでいいのだと思う人が増えてしまい、そういう言い回しが使われるようになってしまうのです。そうやって言葉は変わっていくものだと言ってしまえばそれまでですけど、その言葉の中にそれを使っている人の心が現れてしまっているような気もします。
最近わたしが気になっているのは「わたしは〇〇だと思います」と言うべきところを「わたしは〇〇だとは思います」と言う人が増えていることです。本来の使い方だったら「〇〇だとは思いますが、本当は××したいです。」というように、「は」には否定する意味が含まれているはずなのに、どうしてこういう使い方が増えてしまったのか?とても疑問です。
阿川さんの相手の良さを引き出す話の仕方ってステキですね。失礼のないように、といって緊張感を感じさせず、自然に話していくところが魅力です。無理せず、素直に、そういうところを真似していきたいなぁ!
1987冊目(今年7冊目)
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