『本の声を聴け ブックディレクター幅允孝の仕事』 高瀬毅
ブックディレクターというのは、言い換えれば「本棚の編集者」である。「本を編集」するのではなく、「本棚を編集」するのだ。本文より)
幅さんは本棚にどんな本を並べるのかを考える編集者、あるいはデザイナーともいえるかもしれません。最初は書店の本棚でしたが、その才能が生かされる仕事はドンドン違うジャンルへと広がっていきました。カフェ、ブティック、会社の入口、映画撮影などなど、書店以外の場所に本を並べるという仕事が増えていったのです。
海外の本屋って、町はずれの本屋でも、朗読会をやっていたりとか、小さなイベントをやっていたりとか、深夜にも営業していて学生さんでにぎわっていたりするんです。特にニューヨークのダウンタウンなどは元気な本屋があります。東京は、スーパーマーケットのような本屋はあるんだけど、ちょっとはずれのダウンタウンのような場所の本屋が元気がない。
新刊が出るタイミングで著者を読んでイベントを行うとか、朗読会をするというような書店は、日本ではやっぱり大手さんが中心なんですよね。小さな本屋さんや雑貨屋さんが本に関するイベントを行うというのはなかなか面白い取り組みだと思うんですけど、そんな企画を立てる人が少ないのかしら。雑貨などと組み合わせることで売上を増やしているお店もあるし、元々ある商品と本をコラボレーションするのって面白そうですよね。もっと、いろんな形の本屋さんがあっていいと思うんだけどなぁ。
売り上げを伸ばすよりも、本って悪くないよね、という人が毎年1パーセントずつ増える状況を30年間つくり続ける、そんな小さな会社が理想的です。
幅さんはブックディレクターとして独立し、小さな会社を経営していらっしゃいます。そこでは、本に興味を持ってもらうための取り組みを色々と行っています。本がどれだけ売れるのかといのも大事なことだけど、何より大事なのは本に興味を持つ人を増やすことなんだそうです。
電子書籍は紙の本を増やす
電子書籍が普及すると紙の本が減るんじゃないか?と危惧する向きが多いのですが、実際には形はどうあれ書籍を読まない人が増えているということが問題なんです。だから、入口は電子書籍であっても、本って面白いなって思ってもらえたら、紙の書籍も増えていくというのが現状のようです。
ブックディレクターの幅さんは、とにかく本が大好きで、この仕事をしているのだそうです。
そういう仕事をできるっていいなぁ!
1989冊目(今年9冊目)
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