『大川の水』 芥川龍之介
読友さんのご紹介で芥川龍之介の「ポーの片影」を読んでみたら、エドガー・アラン・ポーへの愛に溢れていてビックリでした。
そこで思い出したのが、ご近所の両国高校敷地にある「芥川龍之介 文学碑」のことです。
この碑には「大川の水」の最後の部分の文章が刻まれています。
もし自分に「東京」のにおいを問う人があるならば、自分は大川の水のにおいと答えるのになんの躊躇もしないであろう。ひとりにおいのみではない。大川の水の色、大川の水のひびきは、我が愛する「東京」の色であり、声でなければならない。自分は大川あるがゆえに、「東京」を愛し、「東京」あるがゆえに、生活を愛するのである。
「大川の水」は大正3年(1914年)4月1日発行の雑誌『心の花』第18巻第4号に「柳川隆之介」の署名で掲載されました。
芥川は生まれは京橋区入舟町(現・中央区明石町)でしたが、母親が病気のため、本所区小泉町(現・墨田区両国)にある母の実家の芥川家に預けられ、後に叔父の養子となり、この家から江東尋常小学校(現・両国小学校)、府立第三中学校(現・両国高校)へ通っていたのです。
大学を卒業後、大川(隅田川)から離れた土地で暮らすようになったけれど、やっぱり大川が懐かしくてしばしば訪れると語る「大川の水」という随筆の中に、芥川の心の故郷はここにあるという気持ちが強く出ていると思います。
大川に浮かぶ船や、鳥たちを愛し、ヴェネチアになぞらえてほめたたえているあたり、芥川ってモダンボーイだったのかしら?と思わせます。
当時は渡し舟も何か所かあったけれども、それも段々なくなっていくのだろうと憂いている芥川です。それほどに大川を愛していたのなら、大川のそばで暮らしていればよかったのに、そうしたら、もうちょっと長生きできたのかもと思うのです。
2003冊目(今年23冊目)
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