『真夜中のたずねびと』 恒川光太郎
本人が悪いわけではないのに家族が酷い人だったり、ふとした気のゆるみで事故を起こしてしまったり、そんなことがきっかけで人生があらぬ方向へ進んでしまった人たちの物語です。
自分の身近な人である家族や友人から怖い目に遭うことって、決して特別なことではありません。子どもの育児を放棄したり、暴力をふるう親。いつまでたっても親元から離れず、寄生しているような子ども。学校や職場でのいじめ。こういうことって、最近は表立って語られることが増えただけで、実は昔からあったことです。
ただ、昔より厄介なのは、何かが起きた時にそれを不特定の人に知られてしまう可能性が高いということです。知らない人から非難され、攻撃されることは、命を失うことにつながったりもします。
悪事を働いて警察に捕まることよりも、実は不特定多数からの攻撃の方が怖いのです。
幽霊よりも、警察よりも、見えない人が怖い。そんな気持ちになる本でした。
この5編が収められています。
・ずっと昔、あなたと二人で
震災孤児の少女アキはおばさんの家から逃げ出して、占い師のおばあちゃんと暮らすようになりました。
・母の肖像
少年は育児放棄され、施設で育ちました。ある日母親から会いたいと連絡がきたのです。
・やがて夕暮れが夜に
16歳の弟が殺人を犯してしまって、家族は世間から責められ一家離散してしまったのです。
・さまよえる絵描きが、森へ
交通事故を起こしてしまった男は、その償いをしようとするのですが。
・真夜中の秘密
田舎の家をレンタルしている藤島は、夜中に不審な自動車の音に気がつきました。
2017冊目(今年37冊目)
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