『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』 辻仁成
パリ在住の辻仁成さんが2020年2月~6月の生活を記録した日記です。ロックダウンしたパリで様々なことを考えています。
パリは今、戦時下である。コロナ戦争の真っただ中である。贅沢をせず、この生活になれることが大事だと二人で励まし合っている。一緒に運動をやり、一緒にご飯を作り、笑顔を忘れずに生きている。逆を言えば、生きていることがありがたいと思える日々でもある。(本文より)
パリに外出禁止令が出るようになって、散歩と買物しか外出できなくなったけど、学校が休みになってしまった息子さんと話をする時間が増えて良かった。一緒に料理を作ったり、掃除したりという時間ができたことも楽しかったと言っています。コロナのせいで外出できないのは悲しいけど、こうやって息子さんと二人の時間を大事にできたのは、一つの収穫だったのかもしれません。
外出に制限がかかるようになってから、それまでは買い物のついでにカフェでコーヒーを飲んだり、知り合いと世間話をしたりしていたのに、そんなこともできなくなっていました。東洋人だからといって差別されるような目にはあっていないけど、レジの行列に並んでいる人が「僕はイタリアから来た」と言ったら、そこで買物をしようとしていた人がすぅっといなくなるのを見てしまったり、お店の人の人のジョークがもし本気だったらどうしようかなんて思ってしまったり、何となく不安な気持ちを持って生活している感じです。
辻さんは、自分は息子とふたりだからいいけど、ひとり暮らしの人は誰とも話をすることができなくてタイヘンだよなぁ。消毒に追われながらも店を開き続けている食料品店の人もタイヘン。飲食の人はもっとタイヘンだけど、家賃と人件費は国が見てくれると初期の段階から決まっていたのがせめてもの救いだな。日本ではこういうところはどうなってるんだろう?って心配してます。そうです、辻さんの想像どおり日本は全然ダメです。とにかく動きが遅くて困ります。
ツジー、俺たちは今、鎖につながれた犬のような状態だ。だからこそ、自由な日常の有難みがよく分った。モップ(愛犬の名前)の気持ちも分かった。俺はいつも死にたいと思って生きていたけれど、反省した。今は生きる希望が芽生えている。だから、毎日、走っているのさ。悪いか?
コロナのお陰で分かったこともあります。自由に外出できることのありがたさや、コロナじゃなくても自由に外に出られない人がいたんだってこと。ストレスで心が擦り切れそうなときには、休めばいいんだってこと。どんな状況下でも、希望を忘れちゃいけないってこと。
今、あなたは人生が楽しいですか?
こんな状況下でも人は生きています。もうしばらく我慢の時は続くけど、いつかコロナがいなくなることを信じて生き続けます。これまで当たり前だと思っていたことが当たり前ではなくなってしまって、わたしたちは初めて気がついたのです。「生きているって素晴らしい。」ソーシャルディスタンスを取りながらでも友達と笑いながら話ができる幸せを感じられるのだと。
よお、エクリヴァン(作家)
やあ、フィロゾフ(哲学者)
と街角で声を掛け合い、語り合う友がいる辻さんは、すっかりパリの人なんですね。
辻さんは、自分は過度にポジティブだと自負してますけど、それでも時々落ち込んでいました。そんな時には「ダメだ~」って認めちゃえばいんだということを学びました。そして、16歳の息子が立派な青年になっていて、弱気になった自分をそっと慰めてくれることの幸せも知りました。
日記という形で記録された自分の心の動きは、後々読み返してみたら、そこから何かが見つかりそうな気がします。わたしも、日常のことを少し書いてみようかなと思います。そして、自分は何を考えているのかを、自問自答してみたいのです。
2011冊目(今年31冊目)
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