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『自閉症は津軽弁を話さない』 松本敏治

自閉症は津軽弁を話さない

松本敏治(まつもと としはる)

「今日の健診でみた自閉症の子も、お母さんバリバリの津軽弁なのに、本人は津軽弁しゃべんないのさ」―津軽地域で乳幼児健診にかかわる妻が語った一言。「じゃあ、ちゃんと調べてやる」。こんなきっかけで始まった「自閉症と方言」研究は10年に及び、関係者を驚かせる結果をもたらすものとなった。(書籍案内より)

 共通語(標準語)とは、関東で使われている言葉を基本としている全国で通用する言葉です。TVやラジオで使われる言葉でもあります。それに対して方言とは、その地域に根差した言葉です。その地域だからこそ生まれた言葉も多く、例えば「しばれる」は「しびれるような寒さ」を表すもので、寒い地方だからこその言葉です。

 単語として存在するもの、イントネーション、など方言はその地域に根差したものですから、共通語と方言を使い分けているバイリンガルの人はかなり多くいます。仕事の話をしている時は共通語だけど、田舎のお母さんから電話がかかってきたら、そこでの話は方言でするということを無意識のうちにやっています。

 ということは、方言・共通語バイリンガルの方にとって、方言とは親しい間で使われる言葉で、共通語はフォーマルな言葉という位置づけになっているようです。これを相手によって使い分けるということをしているのですが、どうやら自閉症の人はこれが苦手、あるいはできないことが多いようなのです。

 

 著者は、最初はこの点に懐疑的でした。でも調査をしていくうちに「ホントだ」ということに気がついていくのです。そして、「自閉症の人は方言を話さない」という結論に至ったのです。

 

 この本の中でわたしが興味深いなと思ったのは、テレビで言葉を覚えるという方法を見つけた少年の話です。彼は話すのが苦手だったのですが、大好きなテレビ番組を何度も見るうちに、自分は耳で音を聞くことが苦手だということが分かったのです。そこで、字幕を使うということに気づいたのです。日本語のアニメを見る時に日本語の字幕を出して見ているのです。すると聞き取れなかった言葉を文字で確認できるので、アニメの登場人物がどう話しているのかが理解しやすくなったのだそうです。

 それ以降、通常のテレビ番組でも字幕を出して視聴することで言葉を沢山覚え、会話が豊かになったというのです。

 この発見は、凄いことだと思います。自閉症の人が話をしないのは、実は話をするために必要な語彙が不足していたからなのではないか?それは音声から言葉を聞き取ることが苦手だからではないか?ということを見つけたのです。

 

 読字障害(ディスレクシア)、書字表出障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)のような学習障害はかなり認識されてきましたけれど、まだまだ一般的に理解されているとは言えません。言葉を聞き取る力が弱い「聴覚情報処理障害」というのも同じように理解されていない障害なのです。

 自分でもわかっていない障害のために、生活のいろんなところで苦労されている方が多くいらっしゃいます。それを少しでも補っていく方法を見つけることは大事です。

 元々障害がなかった方でも、歳とともに様々な機能が低下します。わたしたちはみな障害者なのだという意識を持つことが、みんなが生きやすい世界を作る最初の一歩だなと思います。

2010冊目(今年30冊目)

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