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『ゴースト』 中島京子

ゴースト

中島京子(なかじま きょうこ)

朝日新聞出版

 ゴースト、幽霊、お化け、そういうものの存在を、わたしは身近に感じたことはないけれど、いないという確証もありません。でも、生きている間に叶えなれなかった思いを持ち続けてしまった霊が家や物に憑いてしまうってこと、あるかもしれないわねって気持ちがあるのは確かです。

  この本の中で一番気になってしまったのは「ミシンの履歴」です。実家の家業が仕立て屋だったので、家には何台もミシンがありました。子供の頃はすべてのミシンが足踏み式ミシンでした。ミシンのテーブル部分だけは木でしたけど、足の部分は鉄で唐草模様のような柄が入っていて、黒いヘッドはピカピカと光っていて、なかなかオシャレなデザインでした。

 この物語に登場するシンガーのミシンは、普通の家で家族の服を縫ったり、洋裁学校で大勢の生徒に使われたり、いろんな運命を背負ってきました。戦火に遭い傷ついたミシンは、焼け跡でどんな気持ちでいたのだろうなんて想像してしまいました。森羅万象に魂があるのだとしたら、ミシンに魂があってもいいですよね。

 「廃墟」というのは不思議な場所ですね。昔は人が住んでいた場所なのに、いつの間にか誰もいなくなって、でも建物だけが残っている。そんな所に心惹かれます。ちょっと怖いけど行ってみたいという気持ちになってしまいます。昔と同じように日が差して、風が吹いているのに、誰もいない。そんな所へ行ってみたいなぁってね。

 どの物語にも、行き場のない魂のようなものが登場するのですけど、決して怖くはなくて、ちょっと寂しいという感じなのです。それはわたし自身の魂も同じような感じだからかもしれません。どこか他人事でないという気がするのです。

 

この7つの作品が収められています。

第一話 原宿の家
第二話 ミシンの履歴
第三話 きららの紙飛行機
第四話 亡霊たち
第五話 キャンプ
第六話 廃墟
第七話 ゴーストライター

2040冊目(今年60冊目)

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