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『日本は小国になるが、それは絶望ではない』 加谷珪一

日本は小国になるが、それは絶望ではない

加谷珪一(かや けいいち)

 日本は先進国だ、大国だとまだ信じている人が大勢います。でもそれは、不都合な事実を見ないことにしているからこそ言えている言葉なのです。日本は縮小し続けています。人口が減ることだけが問題なのではありません。これといった産業もなく、特殊な技術があるわけでもないのです。

 ならばインバウンドだと、外国から観光や買い物にやってくる人たちのお金を当てにしていたら、コロナ禍であてが外れてしまいました。今必要なのは、日本はこういう状態なのだと真実を知ること。その中で何ができるかを考えることなのです。

 

(想定以上に出生率が低下しているのは)日本人の経済力の低下が著しく、平均的な所得の人にとって、もはや子どもを育てることは容易ではなくなったことが原因です。(本文より)

 かつて景気が良かったころに得たお金は、一部の人たちだけのものです。普通の多くの若い人達には低賃金の仕事しかありません。非正規雇用というと、一部の人たちというイメージがありますが、現実はそうではありません。低賃金で長期雇用の保証さえない仕事についている人が若い世代に大勢いるのです。

 

定年が70歳まで延長されてしまうと、その分だけ企業はより多くの社員を雇用する必要に迫られます。

 今の日本は高齢者が多く、若者が少ないという状態です。ただでさえ仕事がない若者たちの仕事を高齢者が奪ってしまうという現実もあるのです。

 

スキルアップ教育というのは、時代に合わせて継続的に実施していくことが大事なのです。

 誰でもできる仕事ではなく、高度な技術を持つためには、それなりの教育が必要です。社会人になってからも勉強する場が必要なのです。それも、一回やればいいということではなく、何年かしたらまたスキルアップする、あるいは違う技術を身に着けるという体制でなければ意味がありません。時代によって求められるスキルは変わっていきます。今はIT技術が必要と言われていますが、5年後には不要になっているかもしれないし、別のものが必要になるのかもしれません。

 例えば自動車の自動運転が進んでいったら、普通自動車運転免許という資格はなくなるかもしれません。車という移動手段だってどう変化していくかはわかりません。世の中の動きに合わせていく知恵を持つことこそが、生き残っていく技術なのかもしれません。

 

家事労働を市場経済化していくことが求められます。

 自分で料理ができなくても外食やケータリングを利用すればいいし、掃除代行やホームバンキングなどは一般化してきました。昔のように家事専業の人は必要ではないのです。家族で分担するなり、家事を外注して市場経済にのせることで、やりたくない人や苦手な人は家事を手放すことができ、得意な人は家事を職業にすればいいのです。この分野は、これから伸びていくものなのかもしれません。

 

欧米よりも生産性が低いという厳しい現実を受け止め、実質的な部分から改善していかなければ、豊かな消費社会を実現することはできません。

 「長時間労働が必要なのは生産性が低いから」ということを理解している人が、日本にどれだけいるのでしょうか。長時間労働が美徳であるなんて言うウソでこき使われてきたということに、いい加減に気づくべき時です。長時間労働した挙句、身体や心の病気になる人や、仕事以外の楽しみを見出すことができず、定年後に誰からも相手をされなくなる人。そういう人生が幸せなのでしょうか?

 

 日本は確実に小さくなっていきます。でも小さくなるのが不幸と言うわけではありません。無理やり大きくなる必要がないことを理解し、個人の幸せを尊重する社会にしていけるのか、今がその曲がり角なのかもしれません。

2033冊目(今年53冊目)

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