『ハロー・ワールド』 藤井太洋
文椎泰洋(ふづいやすひろ)は、自分はコンピュータ関係の「何でも屋」だと考えています。プログラムを書くのはそんなに得意ではないけれど、色々な考えをミックスすることや、新しい価値を見つけだすことに自分の価値があると思っています。
だから、ネットの世界だけに埋没する気はありません。リアルに誰かと話をすること、自分とは違う価値観の人と話をすることに興味があるのです。すべての人に自由をと考えて仕事をしていると、圧力がかかってくることもあります。そんなものに屈してしまいたくない彼は、日本という土地に固執はしていません。どこであろうと、自分がいる場所が仕事場であるという考え方で生きています。
これからの時代、こういう人は増えていくのでしょうね。国や制度といった縛りから自由に生きるには、彼のような自由な考え方が必要になります。そして、地球上のあらゆるところに友人がいるという、人と人との結びつきが更に重要になってくるというのも、面白い視点だと思います。
コンピュータや情報技術によって、便利になったわたしたちの生活ですけど、電気が供給できなくなったら?GPSが狂ったら?見えない力から圧力をかけられたら?そういう怖さのことも考えなければならないのも事実です。
明日はきっと明るいと信じるには、世界に目を向けることが必要なのだという思いが強くなりました。
「僕は世界と繋がっていたい」その思いをみんなが持っていたら、きっと世界は微笑んでくれるはずです。
この6編が収められています。
・ハロー・ワールド
泰洋はコンピュータ関連のアプリケーション開発の様々な仕事に関わっています。その傍ら、友人と3人で広告ブロッカーを作っています。たいした売り上げにはなっていないと思っていたら、突然不思議なことに気がついたのです。その売り上げのほとんどがインドネシアのユーザーなのです。
・行き先は特異点
カーナビの言うとおりに運転してきたのに、なぜかカリフォルニアの何にもない場所に来てしまい、そこでGoogleのテスト中の自動運転車に追突されてしまった泰洋。最初はテストカーの問題だと思っていたんだけど、どうやらGPSがおかしいらしいのです。
・五色革命
バンコクから今日帰ろうとする日に、町中に突然赤いデモ隊が現れて、泰洋はホテルから出られなくなってしまいました。
・巨象の肩に乗って
「マストドン」というツイッタークローンを泰洋は作りました。誰からも自由であるために。
・めぐみの雨が降る
ビットコインが世の中で流通するようになったけれど、これは現実のお金と置き換わることはあるのでしょうか。
これよりも、もっと自由な通貨を作ることはできないのかと、泰洋を誘う人が現れたのです。
・ロストバゲージ
長春にやってきた泰洋のスーツケースはロストバゲージになってしまったのです。
#ハローワールド #NetGalleyJP
2034冊目(今年54冊目)
« 『日本は小国になるが、それは絶望ではない』 加谷珪一 | トップページ | 『オリガミ』 辻仁成 »
「日本の作家 は行」カテゴリの記事
- 『東京の古本屋』 橋本倫史(2022.05.22)
- 『幻想映画館』 堀川アサコ(2022.05.12)
- 『空き家課まぼろし譚』ほしおさなえ(2022.04.09)
- 『仕事消滅時代の新しい生き方』 本田健(2022.04.03)
「NetGalleyJP」カテゴリの記事
- 『放送作家ほぼ全史 誰が日本のテレビを創ったのか』 太田省一(2022.05.24)
- 『奇跡のミシン 天国の声、届けます』 清水有生(2022.05.19)
- 『降伏の時』 稲木誠 小暮聡子(2022.04.28)
- 『本おじさんのまちかど図書館』 ウマ・クリシュナズワミー(2022.05.21)
コメント