『働きアリに花束を』 爪切男
家庭の事情により八歳で労働者デビュー、働くことの意味も分からぬまま、ただ無邪気に働いていた。(あとがき より)
チャーハンの機械が壊れてグルグル回っていたのを見ていたことも、獅子舞のご祝儀に大枚を頂いて涙したことも、カットモデルでアルフィーの3人の髪型にしてもらったことも、SMバーで磔になっていたことも、女装おっさんと段ボールに土を詰めたことも、どれも凄い経験だなぁ!普通出来ないようなことを、それはそれはたくさん経験して、今の爪切男さんができあがっているんだろうな。
中華料理屋、家庭教師、警備、清掃、単発から長期までいろんな仕事をしてきて、普通の人だったら嫌になってしまいそうな出来事も、変な人達との出会いも、そういうこと全部楽しんでしまっているところがいいなぁ。
大人になったら、いい人ともいっぱい出会うけど、嫌なヤツにはその倍は出会う。でも、絶対に喧嘩したらあかん。アホに付き合うとこっちもアホになる。自分の頭の中でそいつを殺せ。そして許せ。想像力さえあれば、人間は楽しく生きていける。(叔母のことば)
お父さんが大きな借金を作ってしまったので、子ども時代はいつも貧しかったけど、周りの人達がみんな優しいし、ちゃんと見ていてくれたのね。人に恵まれていたというのは何にも勝ることですね。
私には、自分を叱ってくれる人の存在が必要だった。間違いを犯したときに、ちゃんと説教をしてくれる人がいる。それは何物にも代えがたい安心なのだ。
飲みに行った店で店長に説教されたんだけど、後日その店にもう一度行って「前回はすいませんでした。ここでバイトさせてください。」って言えちゃうのが凄いわねぇ。自分に本当のことを言ってくれる人のそばにいたいという気持ちって、この人は人を見る目があるんだなぁって思います。子供の頃から苦労した分、人間の本質を分かってるんだろうなぁ。
誰かから愛される人であるということは、それを受け入れる心を持っていたということでしょ。放っておいたら天狗になってしまう自分のことを叱ってくれる人を慕うって、凄い人ですよ爪切男さんは。
久しぶりに面白いエッセイを読みました。知らない人と出会ったり、未知の体験をするのに、遠くへ行く必要なんてないのね。すぐそこに未知の世界が広がっているってことに気づかせてもらいました。
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