『桜の森の満開の下』 坂口安吾
山賊の男が住む鈴鹿峠の山には美しい桜の森がある。でも、そこ通ると気がふれてしまうというのだ。桜が咲く季節には、男はそこを避けて歩いていた。
男は、美しい女に出会ってしまった。自分の女房にしたくなって夫は殺してしまい、この女を家に連れて帰った。山賊の男は女の言うなりになってしまった。それほどに女に惹かれていた。
女房になった女は、最初のうちは着物やかんざしなどを与えていれば機嫌がよかったが、しばらくする内に、山の中は飽きたから都へ行こうという。
桜には魔物がついているという話は、いくつもあります。そんな話が生まれるのは、満開の桜は怪しさに満ちているからでしょう。満開の桜が散り始めると、そこはもう別世界です。それまでの静けさが嘘のように、強い風が吹いてくるのです。あたりが桜色に染まり始めると、人の気はおかしくなっていくのです。この世とは別の世界に足を踏み入れてしまうのです。
山賊の男が女房にした女は桜の化身だったのでしょうか?それともただの欲深い女だったのでしょうか?
これまでタイトルしか知らなかったこの物語、1947年発表ですから74年も前の作品なのです。なのに、すぅっと物語に入り込めてしまうのが不思議です。これも桜の花の魔力なのでしょうか。
2043冊目(今年63冊目)
« 『スーパーマーケットでは人生を考えさせられる』 銀色夏生 | トップページ | 『怪談えほん 3 いるの いないの』 京極夏彦 町田尚子 東雅夫 »
「日本の作家 さ行」カテゴリの記事
- 『補欠廃止論』 セルジオ越後 24-242-3268(2024.08.24)
- 『6+1の不思議』 斉藤洋 24-240-3266(2024.08.22)
- 『キュリオと月の女王』 斉藤洋 24-234-3260(2024.08.17)
- 『変な人が書いた驚くほどツイてる話』 斎藤一人 24-205(2024.07.19)
「青空文庫・キンドル無料」カテゴリの記事
- 『放水路』 永井荷風(2022.06.22)
- 『桜の森の満開の下』 坂口安吾(2021.03.23)
- 『妙な話』 芥川龍之介(2021.02.13)
- 『大川の水』 芥川龍之介(2021.01.31)
- 『かへ』 藤井慶(2020.07.14)
« 『スーパーマーケットでは人生を考えさせられる』 銀色夏生 | トップページ | 『怪談えほん 3 いるの いないの』 京極夏彦 町田尚子 東雅夫 »
コメント