『オリガミ』 辻仁成
ブリュッセル(ベルギー)で暮らすヴァレリーは角膜移植で再び視力を取り戻しました。でも手術後に見知らぬアジア系の男性の幻が見えるようになったのです。医師に相談しても不思議だねと言うばかり。その幻が誰なのか知りたくて、角膜を提供してくれた女性ベアトリスについて調べることにしたのです。
ベアトリスはナツキという男とつきあっていて、彼女の死後ナツキは日本に戻っているということを知りました。ナツキという男に会ってみたいと思ったヴァレリーは、すぐに東京へ行くことを決めたのです。
ベアトリスはナツキのことをどれほど愛していたのだろう?
ナツキはベアトリスを失ってから、どうやって生きてきたのだろう?
2人のことを考えれば考えるほど、ヴァレリーは今つきあっている男の冷たさや無責任さを強く感じるようになってしまっています。人を好きになるって、人を愛するってどういうことなんだろうと考え続けます。
愛する人を尊重するってことは、その人の自由を奪わないようにすることだけど、自分の気持ちを尊重すると、相手の自由を奪ってしまっているのかもしれない。考えれば考えるほど難しい命題なのです。
でも、この人と一緒にいたいという気持ちはウソではない。わたしはどうするべきなのか?
ヴァレリーは決断したのです。
辻さんが描く風景描写も心理描写も繊細で美しいのです。そして、彼が描く日本の風景は、異国の人の視線のようでいて、故国を懐かしむ人の視線なのだと感じました。
2035冊目(今年55冊目)
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