『同行二人(うさぎとマツコの往復書簡4)』 中村うさぎ マツコ・デラックス
そうなのよ。
死っていうのは、本人よりもむしろ残された人々に、覚悟や決意をせまるものなんだと思うの。死んじゃった人間はそれで終わりだけど、残された人々には明日が来るからね。(うさぎ)
うさぎさんとマツコさんの会話の素晴らしいところは、お互いにちゃんとリスペクトしあっているところなのよね。デブとかババァとか言い合っていても、それは悪口じゃなくて愛情表現。アンタはそうやって生きているのよねって確認してる。そして、お互いに心配しあっている。とんでもない相談もできる。本音で答えている。だから、思いっきりキツイことも言ってるけど、それに対して「ありがとう」って思って受け取っている。
こういう関係を築けるってスゴイことだと思う。
うさぎさんはこの当時、生死をさまよったことがあって、「死」について随分考えていたんです。だから14歳年下のマツコさんに、年上の者として、これだけは伝えなくっちゃと思ってることがいろいろあるの。
だからね、マツコ。これからのゲイやシングルウーマンの課題は「パートナーシップ」よ。結婚の目的が生殖ならば、そんなものしなくていい。ただ、自分を必要としてくれる相手を見つけること。
何度も死にかけた私だからこそ、これは心の底から言える言葉よ。言ってみれば私の遺言ね(笑)。(うさぎ)
マツコ、私は幸せだわ。夫といい、あんたといい、自分の形見を渡せる相手をちゃんと見つけることができたんだもんね。(うさぎ)
それを受け止めるマツコさんも、ストレートに受け取っていて、教わったことを実行できるかどうかはわからないけど、心のどこかに書き留めておくわという気持ちでいるのね。他人とは随分違う生き方をしているから誤解を受けやすい自分を、こんなに理解してくれているアンタに感謝してるわという気持ちが、ものすごく強く伝わってくるの。
それにしたって、アタシはアンタに自由を奪われている、或いは、奪われるかもしれないなんて思ったことは一度たりともないわ。むしろ、アンタからは自由に繋がるヒントを沢山貰ったと思っているし、深謝しているのよ。(マツコ)
魂の双子は今回も、面倒くさい話題について話し合っているけど、決して逃げないのね。その面倒くさいことの原因を作ったのは自分だってわかってるし、それを何とか出来るのも自分しかいないってわかってるから。
それが人生よね。
2057冊目(今年77冊目)
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