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『コンビニ人間』 村田紗耶香

コンビニ人間

村田紗耶香(むらた さやか)

文春文庫

第155回芥川賞 受賞

コンビニ人間として生まれる前のことは、どこかおぼろげで、鮮明には思い出せない。(本文より)

 先日読んだ 文芸ピープルで、この作品の海外での評価が高いという文章を読んで、気になって読んでみました。コンビニという形の中でしか生きることができない主人公、恵子の語りが、妙に生々しいのです。

 子供の頃から変な子だといわれ続けて、自分が思ったことをそのまま言ったり、やったりしてはいけないと学習した主人公は、学校には真面目に通うけれども誰とも仲間になれない、群に入れないままでした。でも、大学生時代に始めたコンビニのバイトだけは妙に気楽にできたのです。マニュアル通りの作業をこなすことが、自分にとってとても自然なこととして感じられたのです。

 彼女には周りの人が考える「普通」が理解できないのです。「学校を卒業したら、普通就職するでしょ」「このくらいの歳になったら、普通結婚するでしょ」みたいなことを言われても、それが何を意味しているのか分からないし、そうしたしたいとも思わないし、そもそもコンビニ人間として生きる以外の生き方なんて、自分には必要ないって思ってるんです。

 世間から言えば、確かに変な人ですけどね。コンビニの仕事が好きで、コンビニのリズムで生きていくのが自然だって思っているんだから、それでいいんじゃない?って思うのだけど、周りの人は、特に妹はそう思ってないのね。ちゃんとしようよって言ってくるけど、それができるくらいなら、とっくにやってるよってことなのでしょうね。

 世間の人たちは、彼女みたいな人を「ちょっと変わった人」くらいに認識してくれていればいいのに、やたらと普通であることを強要してくるんですね。それって世間からのパワハラだなぁって思えてきます。そんな圧力を受けても、恵子さんは割と気にしない人だからいいけど、でも可哀想ではあるなぁ。放っておいてよって思います。

 コンビニでちゃんと働いているんだから、いいじゃない。仕事は真面目だし、気もきくし。いつまでもアルバイトじゃっていうけど、こんな真面目な人でも正社員になれないのが日本って国なんだから、そんなシステムの方が問題だと思うなぁ。

 日本ってこんな国なんだなぁって、いろんな意味で感心してしまう作品でした。

2060冊目(今年80冊目)

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