『字のないはがき』 向田邦子 角田光代 西加奈子
いちばん ちいさいいもうとも とうとう そかいすることに なりました(本文より)
お母さんは肌着を縫ってくれました。お父さんはたくさんのはがきに宛名を書いてくれました。まだ文字をかけない妹に、元気だったら〇を書いて送りなさいと言って渡しました。
ちいさい妹は、肌着とはがきを持って、田舎の町へ疎開しました。
何日かして、妹からのはがきが着きました。そこには大きな〇が書かれていました。それを見てみんな、妹は元気にしてるんだねと思いました。
それから、はがきが何枚も送られてきました。そこに書かれた〇は、すこしずつ小さくなっていたのです。
戦争中、疎開したという話をいろんな方から聞きました。小学校のクラス全員で疎開した人は、田舎に行ったら食料があったけど、地元の子から変な目で見られた。でも、友達がいたからみんなで我慢した。とか、親戚の家に預かってもらうことになったけど、そこでいじめられたとか、つらい話をしてくれる人がほとんどでした。
空襲を受ける心配はないけど、食べるものに関しては田舎でも決して豊かではなかったというのが実情のようでした。でも、もっと深刻だったのは心の問題です。親元から離れて寂しかったというのが一番つらかったのですね。
まだ字も書けないくらい幼い妹は、きっと心細かったんでしょうね。どんな気持ちで〇を書いていたのかしら?
この妹さんって、和子さんだったのかしら。
疎開してひとりぼっちになってしまった少女の悲しみと、同じような悲しみが今の世の中にもあるような気がします。
親はいても放っておかれる子がいたり、いじめに遭ってもそれを誰にも言えなかったりしている子がいます。
小さな〇が×に変わるとき、その小さな「助けて」をどうやって伝えたらよいのでしょう?
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