『セゾン・サンカンシオン』 前川ほまれ
人を依存症にするのは、快楽じゃないよ。心身の痛みや、それぞれが感じている生きづらさが原因で依存症になっていくの(本文より)
アルコール、薬物、ギャンブル、窃盗など、依存症を患っている人は大勢います。でも、その本質はほとんど理解されていないのだと思います。特に当事者の家族にとっては、依存症とは迷惑なもの、本人のわがまま、と思われてしまうことが多いのです。
「もう飲まない」「もうギャンブルはやめる」と言ってるそばから、もうやってるじゃないと批判されてしまうことが多いのが依存症の悲しいところです。
セゾン・サンカンシオンは、依存症から回復するための施設で、女性のみが入居しています。ここには同じような苦しみを知る患者や指導員がいて、お互いを助け合いながら暮らしています。依存症の治療で大事なことは、やってしまったことを他人が否定することではなく、本人がやってしまいましたと自ら認めることなのです。
依存症の人は、自分がやっていることが悪いことだと自覚はしているのです。でも、それを隠そうとすると更に症状がひどくなるという悪循環を繰り返してしまうのです。依存症は一人で戦える病気ではないのです。自分がどんな気持ちであるのかを正直に話すことができる相手が必要なのです。そして、聞いてくれる人は、それに対して意見は言いません。ただひたすらに聞き続け「話してくれて、ありがとう」と言うだけです。なぜなら、答えは本人にしか出せないのですから。
最近、思うのよ。依存症の根源にあるのは、寂しさなんじゃないかって
「跡を消す 特殊清掃専門会社 デッドモーニング 」もそうでしたけど、当事者のつらさや寂しさは、周りの人達には理解されないことがほとんどなのですね。やってしまったことを非難するのは簡単だけど、その原因は何なのか?そこを考えてくれる人はほとんどいないのが現状なのです。
ここで登場する女性たちは、みんな孤独で不安なのです。たとえ家族と同居していても、心理的には独りなのです。一生懸命に頑張れば頑張るほど孤独になっていき、そこから逃げるために手を出したものの依存症になっていくのです。
そして、彼女たちが依存症になっていく原因を作っているのは、ほとんどが身近な人達、家族や学校や職場の人達なのです。でも、加害者たちはそんなことに気づきません。依存症になるような人が悪いのだと責めたてるのです。そして依存症は悪化し、日常生活さえままならなくなっていくのです。
ようやく気付いた。ここは悲しみを噛み締めるだけの空間じゃない。再び前を向くための居場所だということに。
セゾン・サンカンシオンで症状を改善して、社会へ戻っていく人もいれば、再び戻ってきてしまう人もいます。もうすぐ退所できるかと思っていたのに自殺してしまう人もいます。
うつだって依存症だって、根っこのところは同じです。寂しさなのです。他人の視線が怖いという恐怖なのです。
依存症という他人からも自分からもよくわからない病気の真実を知ると、とても胸が痛くなるのです。こんなに大変な思いをしているのに、わかってもらえない辛さ。特に家族や友人など身近な人から理解されない辛さって計り知れないものだです。結局孤独になってしまうのは、そんな辛さに押しつぶされてしまうからなのです。
最終的には心との戦いです。寂しいから、それから逃れるために何かに依存するのだということを、みんなが知ることが大事なのです。あなたは一人じゃないと支えてあげることが必要なのです。
依存症というものを正しく理解するために、大勢の人にこの本を読んでもらいたいと思います。依存症は誰にとっても無関係なものではないのですから。
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