『マイノリティデザイン』 澤田智洋
「ライター」は、もともと片腕の人でも火を起こせるように発明されたものでした。
「曲がるストロー」は、寝たきりの人が手を使わなくても自力で飲み物を飲めるよう作られたものです。
それが今では障害者、健常者、関係なく広く利用されています。
障害者にとって便利なものは、健常者にとっても便利だからです。
つまり、「すべての弱さは社会の伸びしろ」。
ひとりが抱える弱さを起点に、みんなが生きやすい社会をつくる方法論。
それがマイノリティデザインです。(本文より)
澤田さんはデザイン関係の仕事をする方です。お子さんが生まれるまでは、自分の仕事に対して疑問を感じたことはなかったのだそうです。でも、お子さんの眼が見えないということがわかった時に、自分が作った映像作品やポスターをこの子は見ることができないという思いから、自分がやって来たことがすべて否定されてしまったような気持ちになってしまったのです。
自分には何ができるのかを必死に考えました。障害があると何かができないということばかり考えてしまうけど、ちょっとしたことでできるようになったら楽しいよねって、そこに気がついた澤田さん。それ以降、楽しいことをやるためにはということばっかり考えています。
そして、これまでの世の中って、できない人に努力を強いるってことばっかりだったけど、それって間違ってない?ってことに気がついたんです。できないことが悪いことじゃないよね。それをできるようにするアイデアが必要なだけじゃない?
たとえば、スポーツが苦手な人のことを「運動音痴」と考えるのではなく「スポーツ弱者」と定義したら、考え方が変わるでしょ。その視点から新たなスポーツを作り出せるんじゃないかってところから、いろんな「ゆるスポーツ」を考えだしました。
早い、うまい、強いというようなこれまでのスポーツの概念を打ち崩したスポーツの数々は、みんなが笑顔になれるものばかりです。
「誰でもできる」というか、普段スポーツが得意じゃない人が有利になっちゃうかもしれないスポーツって面白いなぁって思います。
ボディシェアリングのロボット「NIN_NIN」の話も面白かったです。家から出られない人が視覚障碍者の肩に乗っているロボットを通じて目の役目をするのです。逆に外に出られない人の代わりに外出するということもあって、相互に助け合うシステムってホントに素晴らしいなと思います。離れたところにいる2人が一緒に外出することができるっていいなぁ!
こういう人と人を結び付けるデザインが増えることで、少しずつみんなが生きていきやすい世界が生まれます。みんなが幸せに生きられる世界を実現するのは、誰かのちょっとした気付きからなのですよね。
2053冊目(今年73冊目)
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