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『殺した夫が帰ってきました』 桜井美奈

殺した夫が帰ってきました

桜井美奈(さくらい みな)

小学館文庫

 茉菜にストーカー行為をしていた男が、自宅にまでやってきて部屋に入れろと迫ってきました。そこへ現れた男がストーカー行為をしていた男を追っ払ってくれたのです。でも、ここで安心することはできませんでした。助けてくれた男は、自分が崖から突き落として殺したはずの夫、和希だったのです。

 夫のひどいDVに苦しんでいた茉菜は夫を殺した後、単身東京で暮らしていました。過去を捨てて生きてきたのに、何故突然夫が現れたのでしょうか。そして記憶喪失になってしまったという夫は、今はとても優しい人になっていて、一緒に暮らそうと言うけれど、あんな怖い人が突然変わるわけないじゃないと茉菜は思ったのです。

 茉菜の人生は最初から辛いものでした。望まれない子だった彼女は母親から疎まれていました。学校にも行けず、服も買ってもらえず、育児放棄されたまま大きくなりました。とにかくこの母親から逃げようという一心で生きてきたのです。

 いろんなしがらみから逃れて、やっと普通の社会で生きていけるようになったのに、あの夫が戻ってきてしまって、ただただ、どうしていいのか分からないのです。

 誰にも言えない秘密を持った人がいて、出会った人も秘密を持っていて、お互いにそれを知らない間は何も起きないけれど、一旦知ってしまったら、別の秘密がまた生まれるのです。

 何十年も経って、今だから言えるという秘密もあるし、一生言ってはいけない秘密もあります。

 いったん秘密を明かしてしまったら、せっかく作った幸せが崩れてしまうかもしれません。でも、隠しきれない秘密もあるのです。

 茉菜の秘密は、少しずつ明かされていきます。その秘密を捨てることができたら、茉菜は幸せになれるのでしょうか。

2075冊目(今年95冊目)

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