『クララとお日さま』カズオ・イシグロ
わたしはクララ、誰かの親友になるのがお仕事です。お店のショーウインドーの中で、ずっと外を見ながら待っていました。わたしを必要としてくれる人がきっと来るはずだから。
そろそろ店長さんも諦めだしたころ、ジョジ―という病弱な少女がわたしのことを気に入ってくれました。これから、彼女の家で暮らすことになります。
多分、近未来のお話なんだけど、今こんなことがあってもおかしくないなと思えるジョジ―とAIのクララの物語です。ジョジ―が病弱なことや、離婚してシングルマザーになってしまったことが原因で母親はかなり神経質になっています。娘のことを心配するのは分かるけど、母親の方が病気かもしれないという所もあります。
クララはこの母親のことを尊重しつつも、ジョジ―の味方になっています。大人には話すことができないいろんな話を一生懸命に聞いてくれます。ジョジ―は少しずつクララを信頼するようになってきました。
クララは太陽光のエネルギーに信仰のような気持ちを持っています。お店にいた頃から少しでも日に当たろうとしていたし、ジョジ―の身体もお日さまの力で良くなっていくと信じています。この本の中に登場する人物の中で、一番素朴で優しい気持ちを持っているのがクララであるような気がします。
こんなに優秀なAIなのに、それを嫌う人もいて、この感情って人種差別と同じような感じもしてきました。クララはアトムや、映画「AI」のデイビッドような運命の子なのかな?ということも頭をよぎり、どうにも切ない気持ちになってしまうラストでした。
2065冊目(今年85冊目)
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