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    (by 本田宗一郎)

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『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 ブレイディみかこ

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
The Real Secondary School Days 

ブレイディみかこ
Mikako Brady

新潮社

本屋大賞2019ノンフィクション本大賞 受賞

一万円選書 の中の一冊

 イギリス・ブライトン市の学校ランキング1位である公立カトリック小学校を卒業した著者の息子は、カトリックの中学校ではなく、元底辺中学校に進学しました。今までと全く違う子どもたちが集まる学校で、様々なことを体験する息子。彼の日常を見てビックリしたり、ため息をついたり、なるほどねと思うみかこさんです。

英国の中学校教育には「ドラマ(演劇)」というれっきとした教科がある。~中略~ 日常的な生活の中での言葉を使った自己表現能力、創造性、コミュニケーション力を高めるための教科なのである。(本文より)

 相手がこんな表情をしたら怒っているとか、喜んでいるとか、悲しんでいるとか、そういうことを学ばないと分からない子がいるという前提でこの授業があるのです。何か辛いときに我慢しろというのではなく、辛いときには辛い表情、言葉のニュアンスを出すことによって相手に分かってもらおうということを教えるのです。自分から発信しないと他人は分かってくれないということを、託児所の時代から教えています。英国はとても現実的な教育をしているのだということを初めて知りました。

 LGBTQの問題も含めた性教育、子どもの権利条約などに関する学習など、子どものころから社会というものを意識した教育をしているのが本当に素晴らしいと思います。差別や貧困などを、知らないところで起きていることではなく、自分のクラスメートや近所に住む人の中にある問題なのだと知って生きていくのは大事なことです。日本の教育の中で圧倒的に欠けているのはこういう部分だなと思います。

 

EU離脱や、テロリズムの問題や、世界中で起きているいろんな混乱を僕らが乗り越えて行くには、自分とは違う立場の人々や、自分と違う意見を持つ人々の気持ちを想像してみることが大事なんだって、つまり、他人の靴を履いてみること。これからは「エンパシーの時代」って先生がホワイトボードにでっかく書いたから(本文より)

 「他人の靴を履いてみる」つまり他人の身になってみるということです。そんなことを言われたら、そんなことをされたらいやだと思わない?という自分への問いかけをしてみてるかな?

 みかこさんの息子さんが「あの人はどうしてそんなことを言うんだろう?」という問いかけをしてきたときに、常に返す言葉は「無知だから」なのです。知らないから偏見が起きる。知らないから批難する。知らないからバカにする。相手が貧乏だから、外国人だから、有色人種だから、そのどこが悪いというの?みんな同じ人間なんだから、それぞれ自由に生きる権利があるということを知らない方が問題なんじゃない?

 

「ダニエルからひどいことを言われた黒人の子とか、坂の上の公営団地に住んでいる子たちとかは、いじめに参加してない。やっているのはみんな、何も言われたことも、されたこともない、関係ない子たちだよ。それが一番気持ち悪い。」と息子は言った。

 最近日本でも問題になっているヘイトクライムの薄気味悪さって、こういうところなんですよね。正義をかざしていじめをする人間が一番いやな奴なんですよ。それは世界のどこでも同じこと。そんな卑怯な人たちが増えているのは本当に嫌になってしまいます。

 子どもたちは学校で平等について学んでいます。それを聞いてなるほどねぇと納得するみかこさんのような親もいるし。そんな話を拒否する親がいたり、そもそも話もできないような家だったり。様々な家があるのです。そういうことも理解つつ、正しい方向へ世界が向かうようにと願う人が増えるための教育というのが、難しいけど大事だなと思いました。

 これまでの制度を守ることばかり考えている日本は、これじゃ置いて行かれるなぁと感じます。世界はドンドン変わっていくのです。困難の種類も変わっていきます。難しいと嘆くよりも、とにかくできることから変えようという英国の教育はいいですね。

 今はできていなくても、未来を作る子どもたちには知っていて欲しいこと、それを教えるのが真の教育だと思います。元底辺中学校だからこそできるのか?英国自体がそちらへ向かっているのか?いずれにしても正しい選択だと思います。日本もこういう所は真似すればいいのにねって思うことがたくさんありました。

 教わったことを覚えるだけが勉強じゃありません。体験すること、表現すること、自分の頭で考えること、そういう機会を与えることこそが真の教育だと思うのですけどねぇ。

2085冊目(今年105冊目)

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