『図書室のキリギリス』 竹内真
自分はキリギリスみたいに将来のことなんか何にも考えずに生きてきたから、バツイチになって仕事を探してもなかなかいい仕事が見つからないのよねって思っていた詩織さん。音楽の先生をしている友人の紹介で、高校の図書室での仕事をすることになりました。前任者の引継ぎ資料を見ながら奮闘していくうちに、少しずつ司書という仕事も面白さが分かってきました。
詩織さんは1年契約で図書室で働くことになったのですが、こういう仕事をする人たちの待遇ってホントにひどいなぁって思います。詩織さんは夏休みでもフルタイムで働けましたけど、学校によっては夏休みは来なくていいといわれたり、長期契約はできないから、短時間勤務のアルバイトでやってくれない?って言われたり。
詩織さんが司書の資格がないのにこの仕事につけたのは、教員で司書の資格を持っている人がいるからというのもありますけど、できるだけ支払う給料を少なくしたいということが原因なんです。司書の仕事をバカにしてる人が多いのにはとても腹が立ちます。
今は高校の図書室でもコンピュータで蔵書管理をしているから、図書カードは使わなくなってしまってます。でも、この本の中で図書カードを使って、ある本の調査をするという話が出てきて、そういう展開ができるって面白いなぁって思いました。
面白い本を紹介したり、イベントを企画したり、詩織さんは図書室での仕事が充実し、人生も楽しくなっていくところがいいですね。
この5編が収められています。
・図書室で勤務するまでの顛末を描いた「司書室のキリギリス」
・図書室の前任者の永田さんを追っていき、彼女が古本屋さんを開こうとしているのに出くわす「本の町のティンカー・ベル」
・図書館の使い方のオリエンテーション授業で居眠りをしていた大隈くんが本に興味を持ってくれた「小さな本のリタ・ヘイワース」
・図書部員の読書会でいろんな意見を交わす「読書会のブックマーカー」
・ブックマーク(栞)コンテストを描いた「図書室のバトンリレー」
スティーヴン・キングの「刑務所のリタ・ヘイワース」が登場したのにはビックリ!この短編は「ショーシャンクの空に」の原作なんですけど、タイトルが全然違うから気がつかない人が多いのよね。
読みたくなる本が色々紹介されてましたけど、一番読みたいのは「小さな本の数奇な運命」です。近いうちに読んでみようと思います。
この作品はシリーズになっているのですね、次作も楽しみです。
2080冊目(今年100冊目)
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