『ヤクザときどきピアノ』 鈴木智彦
この本の表紙の方、そうこの方が鈴木さんです。普段はヤクザ関係の潜入レポで知られている強面ライターさんです。そんな彼が、ある日突然雷に打たれたようなショックを受けてしまったんです。それは映画「マンマ・ミーア」を見てしまったから。映画の中で流れる「ダンシング・クイーン」にハートを撃ち抜かれ、この曲をピアノで弾きたい~と熱望するようになったのです。
ピアノ教室は数多くあれど、彼のニーズにこたえてくれる教室はなかなかありません。そうですよねぇ、ピアノ教室って通常子どもを中心とした若い子が習いに行くところですもの。強面の成人男性を受け入れてくれる教室がなかなか見つかりません。でも、潜入レポを生業とする鈴木さんですから、自分に合った教室を探しまくりました。そして、ついに見つけたのです。自分にぴったりな先生、その名は「レイコ先生」!
弱気な質問をした鈴木さんに、レイコ先生は毅然とこうおっしゃってくださったのです。
練習すれば、弾けない曲などありません。
発表会という締め切りまでに「ダンシング・クイーン」が”絶対に”弾けなくてはならない。
最初は軽い気持ちだったのですが、これをネタに本を書こうということになり、絶対に弾けるようにならなくてはいけない状況に陥った鈴木さんは、がんばります。最初は教室のピアノを借りて練習していたのですが、ついにピアノを(電子ピアノだけど)買っちゃいました。
ピアノの誕生は西暦1700年前後と言われている。似たような楽器のプロトタイプはその前にもあったらしいが、概ね、そういって差し支えないようである。1902年は日本の元禄十五年に当たる。
ピアノの歴史が「時に元禄15年12月14日」という三波春夫の名調子「赤穂浪士の討ち入り」セリフに結び付いてしまうあたり、鈴木さんの盛り上がり方が独特で面白いです。
レイコ先生はこうおっしゃるのです。
飲み込みが早い人はいる。同じ練習をしても、上達の度合いは違う。才能の違いはどうにもできない。
でもね、練習しないと弾けないの。弾ける人は練習したの。難しい話じゃない。
とにかく、レイコ先生は教えるのが上手い!その気にさせるのが上手い!何を聞いても説得力がある!
鈴木さんはいい先生に巡り合いました。彼女がいなかったら、ダンシング・クイーンは夢と消えていたかもしれません。
52歳でピアノを始めようとした鈴木さんの勇気というか、決心は見上げたものです。子どものころからの夢を忘れずにいて、それを実現できる人はなかなかいませんもの。幾つになっても、遅すぎるということはないということを、鈴木さんは実践してみせてくれたのです。
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