『道をたずねる』 平岡陽明
合志俊介には一平と湯太郎という幼馴染みがいました。三人は中学生の時に裏山の楠の木の前で誓いを立てたのです。「一つ、友のピンチは助けること、二つ、友の頼みは断らないこと、三つ、友に隠し事はしないこと。」
俊介はキョーリンという地図会社の調査員になりました。白地図を手に、そこに家の名前を一軒ずつ書いていくのです。表札が見当たらない家の人に家の名前を聞いて怒鳴られたり、犬に吠えられたり、雨が降り、雪が降り、夏の暑い日もあり、それでもきちっとした地図を作るために毎日歩き続けたのです。
別府の小さな地図会社だったキョーリンは、同業者を吸収したりしながら、どんどん大きな会社になっていきました。人が増えれば、いろんな問題も出ます。危ない人に関わったり、手形を持ち逃げされたりしたこともありました。地図は時と共に内容が変わってしまいます。ちゃんと内容を更新していなくてお得様に怒られたこともありました。
地図を作る作業というのは、とにかく確認の連続なのですね。その大変さが伝わってきました。そして3人の友情がずっと続いたこと、同じように彼らの父親たちの友情も続いたことで、本当に大変な時を乗り越えることができたのです。
この物語のモデルとなったゼンリンの地図には、いろんなところでお世話になっています。この地図データがあったからこそ、現在のカーナビシステムがあるのです。
とにかく地図のメンテナンスは大変なものです。最終的には人間が歩いて確認するしかないというのが、これまでの方法でした。個人情報との絡みもあって、ますます地図情報の扱いは難しいものになりそうだけれど、地図は逐次更新されていくのです。これからの時代、地図はどう変わっていくのでしょうか?
P.S. 近江八幡へ調査へ行ったときに、屋根をかける人のヴォーリズさんの建物が登場したのにはビックリ。さすが地元の名士なんですねぇ!
2110冊目(今年130冊目)
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