『日本の堤防は、なぜ決壊してしまうのか?』 西島和
東京のゼロメートル地帯に生まれ育ったわたしにとって、水害というのとても身近なものです。
小学生のころまでは、台風が来たら水が出るかもしれないという前提で全員が動いていました。学校は休み、1階の畳は2階か、少しでも高い所に上げる。お父さんは雨戸を飛ばされないように釘で打ち付ける。停電するかもしれないから、お母さんはおにぎりを作り、子どもはロウソクとマッチと懐中電灯とラジオを用意する。そんな感じでした。
荒川の堤防は2階の屋根より高く、学校の先生からは水が出た時に泳げないと困るぞと脅され、床下浸水なら「この程度で良かったね」というような時代を過ごしてきました。
だから、最近の水害のニュースを見ると不思議でしょうがないのです。みんな水害が起きるということを忘れてしまっているんじゃないかと思うことだらけなのです。
この本でも語られていますけど、最近堤防が決壊したというニュースを見ると、どの堤防も土を盛っているだけだし、ダムの放水が全然計画的じゃないし、水害になるべくしてなっているなと感じます。
最近知った事実で、荒川の堤防は川の左岸と右岸で高さが違っていて、東側が低いというのはビックリ、わたしの実家のあった場所はいつ水害が起きても不思議ではない場所なのです。
何かというとダムが大事とか、スーパー堤防が大事とか、役所側はいろんなことを言ってきますけど、どれも理屈がなってないことばかり。2019年に北陸新幹線の基地が水没したのは記憶に新しいですが、ここは千曲川の支流にある浅川ダムがあるから大丈夫と言われた場所なのだそうです。120両の車両が水没し使用できなくなりました。JR東日本はここのかさ上げや止水板の設置などの対策をするそうです。
岸辺のアルバムで有名になった多摩川水害では、裁判で賠償金の支払いまでに18年もかかったそうです。その判決もその後否決されて賠償金の返還を求められているというのは、なんということなのでしょうか。
かつて水害にあった実績がある場所には史跡や言い伝えが残っています。そういう情報を調べたりすることも重要です。そして、元々宅地ではなかったところは、山を切り開いていたり、埋め立て地だったり、災害の要素が大きい場所が多いのです。引越しを考えるなら、そういうことも考えておかないと、思わぬ被害に遭ってしまうかもしれません。
これからも温暖化が進み、水害は毎年起きるでしょう。そういう災害から身を守るのは結局「自助」しかないというのが今の日本の実情なのです。
2113冊目(今年133冊目)
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