『ラジオのこちら側で』ピーター・バラカン
バラカンさんといえば、「わたしが知らない音楽を紹介してくれる人」というイメージなのですが、もう一つの顔として「CBSドキュメント」が印象深いのです。海外の様々なドキュメントは、日本のマスコミが決して教えてくれない様々な「世界に存在する不都合な事実」を見せてくれたのです。
バラカンさんが日本に来て最初のころは「外国の曲を日本で売る」という仕事をされていたのですが、転職してからはそれまでと逆の「YMOを海外で売る」という仕事になったのです。
現在バラカンさんが出演されている「The Lifestyle MUSEUM」の樋口尚文さんとのお話の中で、坂本教授が「戦場のメリークリスマス」に出演したときに、会社の中で英語が話せる人間が自分しかいなかったので、坂本のマネージャーのような立場でこの撮影現場へ同行したという話をしていました。(この映画の中で、バラカンさんはちょっとだけ出演もしているそうです。)
バラカンさんの理想は、彼がイギリスに住んでいた少年時代に聞いていた「海賊ラジオ局」なんだそうです。あの自由さが大好きなんでしょうね。この感じは、映画「パイレーツ・ロック」を見ると良く分かります。
9.11のテロ直後、アメリカで当時1000を超えるラジオ局を所有していた「クリア・チャンネル」の幹部の一人が、自社の各局向けにメールで送ったのは「今、ラジオで流すのにふさわしくない」100曲を超える長いリストでした。「飛行機」や「戦争」などの単語を含む曲がほとんどでしたが、その中には「Imagine」も含まれていたのです。ラジオ局というのはそれぞれの考え方で運営されるべきなのに、こういう圧力がかかっていたというのは恐ろしい気がします。
バラカンさんにとって、こういう上からの圧力というのは一番嫌いなことでしょうね。バラカンさんはこのリストの内容は知っていましたが、自分の番組内では無視したそうです。
竹中平蔵氏が総務大臣になって設置した「通信・放送の在り方に関する懇談会」は、2006年6月の最終報告書で、NHKのFMは「公共放送としての役割は既に終えた」として、2011年までに民間に開放すべきとしていました。市場原理を公共放送にもちこんだ、恐ろしく文化に理解のない考え方です。クラシック音楽・ポピュラー音楽のどちらの業界からも、リスナーからも非難をあびました。(本文より)
民間のできることと、公共ができることは違うのです。お金の力でどちらかへ動かされてしまう可能性があるのに、そういうところに文化をゆだねることの危うさということを、全く理解していないのです。こんな馬鹿げたことをする人を政府に取り込んだから、その後の日本はとんでもない状態になってしまった、一つの例かもしれません。
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