『「筋肉」よりも「骨」を使え!』 甲野善紀 松村卓
松村 体育の世界ってだいたいその繰り返しで来ていますよね。嫌なことを無理やりやるのが普通というか・・・。
甲野 それがよいことのように思われていますが、私のところに10年ほど前に来た、当時巨人の投手だった桑田真澄さんは、「そういう経験は全く無意味だった」とハッキリ言っています。「だから、自分はもうそんなことを、後輩や子どもたちには体験させたくない」と。
松村 怒鳴ったり、威嚇したり、罵声を浴びせたりするような指導者は、自分がそれだけ能力がないということの裏返しなんだと、それに早く気づくべきだと、どこかで発信されていましたね。
甲野 自分がされたから後輩にするっていうケースが多いんですよ。でも、彼は自分がされたから、こういう馬鹿げたことは自分で終わりにしたいって発信しているわけです。人間的に尊敬できる人ですよ。(本文より)
スポーツをはじめとして、日本社会は根性論がいまだに主流です。長時間練習しろとか、今までそうだったんだから続けるんだとか、「嫌なことを頑張って続ければモノになる」的なことがとても多いのです。昔言われた練習中に水を飲むなとか、うさぎ跳びだって、足を延ばしたままの腹筋運動だって、今は否定されています。なのに、指導者の独りよがりな成功体験で、無理なことをやらされて、壊れていく選手が大勢いるのです。
最近はウェイトトレーニングに重きを置くことが増えてますけど、それに対してもお2人は疑問を投げかけています。筋肉を大きく固くしてしまうと柔軟性が下がり、思ったように動けなくなるし、ケガの原因にもなるというのです。
より高いパフォーマンスを発揮するには、筋肉をリラックスさせることが大事なのに、緊張を強いてしまうことばかりしているのが、現在のトレーニングの実情だというのは、悲しい現実ですね。
アスリートがより高いレベルへ進むには、指導者のレベルが上がらなければなりません。レベルの低い指導者がはびこっている今の日本スポーツ界は変わっていけるのでしょうか?
身体面はもちろん、精神面も守ってくれる指導者が増えることを祈ります。
2108冊目(今年128冊目)
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