『才能のあるヤツはなぜ27歳で死んでしまうのか?』 ジーン・シモンズ
才能に溢れ、世間で脚光を浴び、27歳で死んでしまった人たち。ロバート・ジョンソン、ブライアン・ジョーンズ、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ジム・モリソン、ジャンーミシェル・バスキア、カート・コベイン、エイミー・ワインハウス・・・
彼らは「27歳クラブ」と呼ばれています。
ジーン・シモンズは、あのキッスのベーシスト。最初のころはいろいろ言われましたけど、70歳を超えた今も現役でミュージシャンとして活躍しています。自分と同じように音楽を愛し、才能もあった人たちがなぜ27歳で死ななければならなかったのか?そこを追求していきます。
彼らの死因のほとんどがドラッグ(薬物)です。日本でドラッグというと覚せい剤やマリファナ、のような薬をイメージする人が多いのですが、ジーンははっきりと言っています。アルコールもドラッグなのだと。
ドラッグと言えば、ウィリアム・S・バロウズ大先生ですが、彼は著書の中ではっきりと言っています。「クスリだけで死ぬ奴なんていない、酒とクスリを併用するから、自分がクスリをどれだけ飲んだかわからなくなって、オーバードーズ(過剰摂取)で死ぬんだ。」そのルールを守っていたバローズ大先生は結構長生き(83歳)されました。
幼少期のストレス要因やトラウマもそうだし、家庭が緊張状態にあったりすることも、人格障害の誘因(トリガー)になり得ます。そういう遺伝的要素を持っている人にとってはね。おまけに生まれつき芸術的才能があったりする人ってのはーー遺伝子の影響で、鬱やアルコール依存や薬物濫用といった問題のある家庭に生まれた可能性が高い傾向にあるんです。しかし依存症に関して言えば、遺伝が行動的なものになって、二重の意味で次の世代に伝搬するケースもあります。そういった緊張した家庭の場合、遺伝と行動的影響の完璧なカクテルが二十代半ばで「表面化する」傾向があるんですね。
ではどうしてアーティストはとくに高い確率を示すのか。「クリエイティヴな人々」はなぜ一般的にそういう傾向を持つのか。研究では、アーティストには双極性障害や鬱、総合失調感情障害の確率が高いことが分かっています。クリエイティヴな人はこの手の検査で高い数値を示す傾向があるわけですね。つまり、この種の職業はもともと苦悩を生み出す傾向を持っているということです。(ジェイムズ・ファロン博士 神経科学者)
ファロン博士の説明に、何度も頷いてしまいました。確かにクリエイティヴな仕事であるミュージシャンやダンサーや絵描きの友人たちは、不思議なくらい悩みをたくさん抱えているんです。そして、その受け止め方が普通の人より強烈だなぁって感じます。その感性があるからこそアーティストになれるけど、その感性ゆえに苦悩が大きいということなのでしょうね。
その苦悩のはけ口としてドラッグに走る、そして早死にするというパターンが「27歳クラブ」のメンバーを増やしているのかもしれないけど、彼らが死に至る入口にある「依存症」というものが実に恐ろしいのです。
ジーン・シモンズは、この本の中で何度も「依存症に対する誤解」を謝罪しています。依存症なんて本人がだらしないだけだと、世間も自分も信じていたけれど、これは自分1人では治すことができないたいへんな病気なのだということを知ってから、依存症に対する考え方が変わったというのです。
この病気は、一度かかってしまうとまず治らない、一生付き合っていかなければならない病気だから、依存症にならないように子どものころからこの病気のことを知ることが大事だと考えているのです。
この考え方はとても大事なことだと思います。今の日本では薬物依存やタバコの健康被害ばかりが悪者扱いされていますけど、一番怖いのはアルコールなのです。法律に触れないこのドラッグを大量摂取することで、どんな健康被害があるのか、依存症になって家庭内でDVを起こす人がどれだけいるのか、もっと世間に知らせないといけないのです。
27歳クラブの人たちの死因を見ていくと、確かにオーバードーズで心臓麻痺とか、肝臓疾患とかもいますけどね、アルコールを大量摂取してそのまま寝てしまって、吐いたものがのどに詰まって窒息死という人がかなりいるのです。
ジーン・シモンズはああ見えて、アルコールもドラッグもやらない人です。とても頭の良い人で、経営者でもあり、優れたパフォーマーです。そんな彼だからこそ、早死にする人たちのことを心から残念に思って、この本を書いたのだろうと思います。
最後に、こんな言葉を
人生っておかしなもんだよな。誰もトシなんかとりたかないのに、若死にもしたくないんだからさ(キース・リチャーズ)
2127冊目(今年147冊目)
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