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『本を読む女』 林真理子

本を読む女

林真理子(はやし まりこ)

集英社文庫

 主人公の小川万亀は誰もが認める優等生だけど、本当は違うんです。母親に褒められたくて、先生に優秀だと言われたくて、世間から認められたくて、無理して無理して優等生という仮面をかぶっている自分が嫌でたまりません。できることならお嫁になんか行かなくていい、このままずっと蔵の中で本を読んでいたい。そんな少女でした。

 万亀は女専に進み、卒業後は甲府の青年学校の教師となりました。祖母の身体の具合が悪くなって実家に戻り、祖母の死後は東京の出版社で働きます。結婚はずっと固辞してきたけれど、結局親に押し切られて結婚し大陸へ渡ります。夫が兵隊にとられて一人日本に戻りました。どんな大変な時にも、彼女は本を読み続けました。それがたった一つの、彼女の生き甲斐だったのです。

 

 終戦後、家にあるものをお金に換えるために、東京へ行くようになりました。タバコなどはビックリするほどの高値で売れました。そして家業の菓子屋を再開したのです。ある日、店の片隅に自分が読むために置いておいた本を欲しいという人が現れたのです。その後も店に本を置いておく置くと、どんどん売れるのです。平和になって、本を読もうという人が戻ってきたのです。

 東京へ行ったときには、古本も仕入れてくるようになりました。数年後、万亀は書店を開店したのです。

 万亀は、やっと自分がやりたいことにたどり着いたのです。子供のころは小説家になりたいという夢もあったけど、書店っていうのもなかなかいい仕事じゃないですか。大好きな本に囲まれて毎日を過ごせるのですもの。

 

 万亀は、林真理子さんのお母様がモデルなのだそうです。林真理子がああいう人になったのも、この母、そして祖母の影響が大きいのだなと思います。

 親の言うとおりにしなさい!世間に顔向けできないようなことをしちゃいけません!そういう呪縛から逃れるために、頑張った万亀。そんな彼女の人生を文章として残したいと思ったのは、この母親を尊敬していたからこそでしょうね。

 女であることがハンディキャップにならない時代は、いったいいつやってくるのかはわかりませんけど、こういう先達の努力を無駄にしてはいけないと思うのです。

2160冊目(今年180冊目)

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