『りぼんちゃん』 村上雅郁
小学6年生の朱理(あかり)ちゃんのクラスに転校生がやって来ました。彼女の名前は理緒(りお)、髪の大きなリボンが似合うかわいい子です。担任の先生から、彼女に学校の事や、町のことを教えてあげてねと頼まれた朱里ちゃんは、一緒に登校し、休み時間も一緒、二人はどんどん仲良くなりました。
朱理ちゃんは本を読むのが大好きです。そして物語を作るのも大好きです。一人の時間ができると、あかずきんちゃんとおばあさんのお話を書いています。おばあさんは、とてもやさしくて、朱里の話をいつでも聞いてくれた自分のおばあさんがモデルです。あかずきんちゃんは朱里がモデル。そこに、新しく友達になった「りぼんちゃん」も登場させることにしました。
仲良くなった理緒ちゃんには、どうも悩みがあるらしいのです。でも、それを言いたがらないので、朱里ちゃんはどうしていいのかわかりません。それを誰かに相談したいのだけど、誰も本気で話を聞いてくれなくて、悩みは深まるばかりです。
きみが思っていることを、そのまま言えばいいんだよ。上手に言おうとしなくていい、聞こえがいいようにかざる必要もない。心配しないで。ちゃんと伝わるよ(本文より)
疑問や悩みを誰かに伝えたいんだけど、それを受け取ってくれる人が見つからなかったり、そもそもそういう人がいなかったり、思いを自分の中に閉じ込めてしまっているのって、とてもつらいことです。誰でもいいから、黙ってわたしの話をきいてください。そんな心の叫びを受け止めてくれる人はどこにいるのかしら?
知識は暗闇を照らす光なんだ。『知らない』ことで見えなかったものを、見えるようにしてくれる。だから、勉強することは魔法なんだよ。
自分の気持ちを伝えることも、誰かの気持ちを受け取ることも、どちらも大事なことです。伝えなけえればわからない。わからないから誤解が生まれる。わからないから、なかったことにされてしまう。
理緒ちゃんのことをいろいろ心配するうちに、朱里ちゃん自身の問題も少しずつわかってきました。子どもと大人の間にいる今だから、いろんなことを勉強しなけりゃいけないんだなということも、もっと素直に聞くことも大事だなということも、話す前にあきらめるなんてしちゃだめだっていうこともね。
大人の身勝手で子どもが傷ついてしまうことも、その子が大人になってから、同じことを繰り返してしまうかもしれないこと。そういう負の連鎖を招かないためにも、この本は大人が読んだ方がいい本じゃないかしらと思うのです。
#りぼんちゃん #NetGalleyJP
2144冊目(今年164冊目)
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