『スローカーブを、もう一球』 山際淳司
「二度読んだ本を三度読む」で紹介されていたこの本を読んでみました。
オレは投球モーションに入って腕を振りあげるときに一塁側に首を振り、それから腕を振り下ろす直前にバッターを見るクセがついている。これは阪神に入団して3年目ぐらいのときに金田(正一)さんから教わったものなんだ。投げる前にバッターを見ろ、相手の呼吸をそこで読めば、その瞬間にボールを外すこともできる。石渡に対する2球目がそれだった。石渡を見たとき、バットがスッと動いた。来た!そういう感じ、時間にすれば百分の一秒のことかもしれん。いつかバントが来る、スクイズをしてくるって思い込んでいたからわかったのかもしれないね。オレの手をボールが離れる前にバントの構えが見えた。(江夏の21球 より)
江夏はボールを離すその一瞬にスクイズを見破り、投球を変えたんだけど、こんなことができたのはやっぱり江夏だったからこそなのでしょうね。このイニング中に目に入った、万が一のためのリリーフ(北別府)が投球練習を始めたことに動揺する江夏。古葉監督は延長で代打を出したらという想定でこの行動に出たらしいけど、江夏の立場から言ったら「オレのことを信用してないのか!」って思うのは当然だなぁ。同じものを見て、あれはないよなって江夏に声を掛けた衣笠。彼は本当にいいヤツなんだね。そうやって声を掛けることで江夏の気持ちをクールダウンさせてくれている。
この本に登場する話は、この江夏の話以外はほとんどが無名なスポーツマンの話。高校野球、シングルスカル(ボート)、ボクシング、スカッシュ、棒高跳び。それぞれに努力し、あるレベルまで到達した人たちの話は、達成感もあるが、もの悲しい。そのスポーツをどうしてそこまで極めたのか?その理由は様々だけど、どこか冷めた目で自分を見ている人の話は興味深い。
好きだから始めたことなのに上手くならなかったり、大して好きでもないのにやってみたらすぐに上手くなってしまったり、人の才能というのは不思議なものです。ものすごく才能があったのに燃え尽きてしまったり、大会に出るほどの技術がなかったからこそ、かえって長続きすることもあるし。努力が必ず報われるわけでもないところが、スポーツも人生も難しい所なんだよねって思います。
久し振りに読んだ山際さんの文章は、やっぱり面白かったです。
2154冊目(今年174冊目)
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