『希望 行動する人々』 スタッズ・ターケル
スタッズ・ターケルは独自のインタビューのスタイルを確立し、インタビューで構成した本を多数出版された方です。
「よい戦争 The Good War」で1985年ピューリッツァー賞を受賞しています。
人種問題、食糧問題、移民、貧困、反戦、労働者の地位向上、亡命、冤罪、DV、アルコール依存、平和運動、公民権運動・・・
この本に登場する人たちは、あらゆる意味で戦い続けてきた人たちです。
彼らのほとんどが、自ら望んでそんな状況に陥ったわけではありません。生まれた家庭が貧困だったり、生まれた国が独裁政治だったり、育った地域が労働者階級の町だったり、苦しい生活が当たり前という環境で、ほとんどの人たちが諦めの気持ちしか持っていない場所で、このままではいけないと行動を起こした人たちです。
彼らはみな、淡々ととてつもない話をしてくれます。もしかしたら、そこで死んでしまったかもしれない環境から身一つで逃げ出してきた人。家族から「ばかなことをするな」といわれても信念を曲げなかった人。どん底まで落ちて、そこから這い上がってきた人。
わたしたちはみな、何かしらの重荷を背負って生きています。ずっと背負い続けていると、その重さを感じなくなってしまう時があります。重いと思いながらも、それが当たり前になってしまう事もあります。
より良い生活を望むことを阻んでいるのは何なのでしょうか?それは外からの圧力なのでしょうか?それとも、自分自身のつまらない思い込みなのでしょうか?
欲深い人たちのせいなのでしょうか?人を人とも思わないような卑しい人たちのせいなのでしょうか?
読んでいて胸が苦しくなる時もありました。でも、目を離すことができないことがたくさん語られていました。
踏まれても、倒されても、立ち上がり、前進し続ける。
すばらしいインタビュー集でした。
2138冊目(今年158冊目)
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