『東京のぼる坂くだる坂』 ほしおさなえ
アラフォーで母と二人暮らしの富野蓉子の父・守之は、引っ越し好きの変人で、亡くなるまでに移り住んだ家は30箇所を超える。それらはすべて東京の名のある坂の近くに建っていた。
幼い頃家を出ていった父の遺言状には、自分が住んだ坂のリストがあった。(書籍紹介より)
容子さんは父親が愛していた坂道を歩くことで、父親の心を探ってみたかったのかもしれません。なぜ、妻子と共に暮らすことよりも坂のある町で暮らすことを取ったのか。それは、ずっと心の中にしまい込んでいた思いだったのでしょう。
東京には坂がたくさんあります。名もない坂もあるけれど、この父親は有名な坂のある町を転々としています。母親は坂のある町は生活しずらいと言って平らな土地を選び、今も住んでいます。だから父親が好きだった坂を巡っていることは母親には内緒でした。
坂道を歩き、時には自分の幼いころの記憶をたぐり、容子さんは様々なことを考えます。父は坂道のどこに魅力を感じていたのか?それが何となくわかるような気がしてきたり、友人たちの人生に思いを馳せたり、自分はこれからどう生きていくのかを考えたり。
短いけれど急な坂もあり、何処まで続くのか分からないようなダラダラ坂もあり、曲がりくねった坂もあり。坂を上ったり下ったり、坂道は人生と似ているのかもしれません。
様々な道を歩きながら容子さんは、今まで気づかなかった家族のありかたを見つけたのかもしれません。
・幽霊坂
・闇坂
・狸穴坂
・梯子坂
・胸突坂
・別所坂
・王子稲荷の坂
・くらぼね坂
・異人坂
・桜坂
・三折坂
・明神男坂
・氷川坂
・本氷川坂
・相生坂、赤城坂
・蛇坂
・蓬萊坂
知っている坂はいくつかありましたけど、わたしの記憶にはっきり残っているのは「明神男坂」だけです。昔、取引先の事務所が神田明神の裏にあって、よく神田明神を抜けていきました。男坂のあたりには黒塀がいくつかあって、特別な町なのかなぁって思いながら歩いたことを思い出しました。
#東京のぼる坂くだる坂 #NetGalleyJP
2139冊目(今年159冊目)
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