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『眠る盃』 向田邦子

眠る盃

向田邦子(むこうだ くにこ)

講談社文庫

 先日読んだ絵本「字のないはがき」の原作が読みたくて、この本を開きました。「字のない葉書」には父親の愛がいっぱい詰まっていたのですね。

 この本は以前に読んだのは、多分20代のころだったと思います。それから何十年も経って再読してみると、今の年齢だからこそわかることもあるのだなぁと思ったりもします。

 家族のことを大事に思っているのに、うまく言葉にできない父親。いろんなことを我慢しながら家庭を切り盛りしてきたのだろう母親。若い娘にあれやこれやと言ってくる周りの人たち。一生懸命に仕事をしているけれど、どこか詰めが甘くて失敗してしまう自分。そんな日常を描かせたら向田邦子にかなう者はいません。

 内弁慶だった父のことを書いて評判になった「父の詫び状」を発表した後、「うちの父もそうでした」というような感想を沢山聞いたりして、世間ではとても評判が良かったのに、家族内では評判が悪かったとぼやくあたりも、正直でいいなぁと思うのです。

 電車から見えたライオンの話もそうですけど、自分にしか見えなかったのかもしれないと文章にした後に、それに回答をくださる方の多いこと!こういうリアクションを頂けるのは、文筆家としてさぞかし嬉しかったでしょうね。当時は今と違って個人情報の扱いがかなりルーズだったので、直接電話や手紙をくださる方が多かったのですね。それだけ、大らかな時代だったのかもしれません。

 先日、小林亜星さんがお亡くなりになって、ニュースで「寺内貫太郎一家」の映像が何度も流れました。あの画面に映っていたあの人も、この人も、向田さんとあちらの世界でお会いになってるのかしら?

2137冊目(今年157冊目)

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日本の作家 ま行」カテゴリの記事

コメント

Rokoさん
たまにはこちらにもコメントを。そうそう!ライオンの話もありましたっけ。今ではネットで一瞬でしらべられるけれど、情報はこうして人の口からもらってましたっけ。

私は子供の頃、ドラマしか存じ上げませんでしたが、向田ドラマは子供ごころにも秘密の臭いみたいなものが感じられました。

寺内貫太郎一家のご飯シーンは、向田さんが献立を考えていたと、別の本で読みました。食に対しても興味がつきない向田さんらしいですね。

日月さん☆コメントありがとうございます。

わたしも子どものころはドラマしか知らなくて、ましてやあんなにきれいな人が書いているとは思ってもみませんでした。

「阿修羅のごとく」あたりから、やっと向田さんという人を意識するようになったような気がします。

食いしん坊な向田さんが寺内貫太郎一家献立を考えていたというのは、いかにもなエピソードですね。

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