『妄想銀行』 星新一
星新一のショートショートは中学生のころに片っ端から読んだのだけど見事に忘れていて、おかげでとても新鮮な気持ちで読むことができました。どの作品も、たぶん半世紀も前に書かれたものなのだけど、どれも今の時代の話のように思えてくるのが不思議です。
「かぼちゃの馬車」で、美しくなりたいと望んだ女性の心理は、今も昔も同じだし、「ナンバー・クラブ」で楽しく会話する人たちの光景はまさに今起きていることって思えます。
人々の妄想を集めて、それを商売にする「妄想銀行」って発想は、すごいなぁと思います。本当にこれができたら面白いけど、悪用する人もいるだろうなって心配もしてしまいます。
星新一の作品は、どこかとぼけた感じのところと、運命とはかくも冷徹なものであるという二面性をいつも感じます。
彼が大学院生の時に父親が急逝し、星製薬の経営に携わったのですが、その時の苦労が作品に反映されているのかもしれません。
SFというジャンルに入れられてしまうことが多い星新一作品ですが、実は心理的な考察に優れていると感じるものが多くて、今を生きる人たちにもっと読んでもらいたいなと思うのです。
この本には「古風な愛」「声」「破滅」「妄想銀行」「末路」「かたきうち」「やつら」「秘密結社」「厳粛な儀式」「ナンバー・クラブ」「若がえり」「超能力」「かぼちゃの馬車」「きょうという日」 の14編が収められています。
最後に、星新一さんの文章と和田誠さんの絵という組み合わせが、不思議な世界をより一層楽しくしてくれているなぁと感じました。
2182冊目(今年202冊目)
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