『夏と花火と私の死体』 乙一
夏と花火とわたしの死体
それはわたし(五月)が9歳の夏のお話です。わたしは弥生ちゃんと仲良しで、彼女には健くんという2歳年上のおにいちゃんがいました。ある日、弥生ちゃんと木の上でおしゃべりをしていました。その時、初めて「健くんが好き」と弥生ちゃんに言ったんです。そうしたら、弥生ちゃんがわたしのことを突き飛ばしたんです。木から落ちたわたしは血を流して死んでしまいました。
弥生ちゃんは健くんに、五月ちゃんが木から落ちたとしかいいませんでした。そのまま事故死ということにすればよかったと思うのですが、なぜか2人は、わたしの死体を隠すことにしたんです。
死体を隠すという大変なことなのに、健くんは意外と冷静です。弥生ちゃんはホントは怖いけど、自分が殺したことがバレてはいけないという恐怖から、健くんの言うとおりにしています。
死体となってしまった五月ちゃんは、そんな2人のことを冷静に見つめています。この視線が怖いなぁ。何にも言わないけど、全部知ってるよっていう存在と一緒に行動する2人の行く先々でドキドキしてしまいます。なぜかこの2人になってしまったような気がして、わたしもドキドキしてしまいます。
アイスクリーム工場に努める緑さんが、あんな風に登場するとは思いませんでした。そして、彼女の秘密にもビックリ、スティーヴン・キング作品に登場しそうな人でした。
優子
身寄りのない清音(きよね)さんは、鳥越家で住込のお手伝いさんとして働くようになりました。このお宅には旦那様と奥様の2人でお住まいだと聞いていたのですが、働くようになって2週間経ってもまだ奥様にお会いしたことはありませんでした。旦那様と奥様のお部屋には絶対に入ってはいけないと言われていたのですが、どうしても入ってみたくて。
どちらの作品も怖いお話だけど遠い世界の話ではなくて、もしかしたらすぐ隣でこんなことが起きてるかもしれないって思えるような感じがゾクゾクっときます。こんな作品を16歳で書いた乙一さんってスゴイ!
2162冊目(今年182冊目)
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