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『もはや僕は人間じゃない』 爪切男

もはや僕は人間じゃない

爪切男(つめ きりお)

中央公論新社

「仏教の教えでは、人の一生は”苦しい”が基本となっているんですよ」
「え、人生って素晴らしい、ではないんですか」
「人生は思い通りにならない。頑張ったからといって必ず報われるわけではない。この世に永遠なるものは存在しない。”諸行無常”というやつです。人生はそれぐらいのもんなんだと考えれば、生きるのが少し楽になるかもしれません」

 なぜかパチンコ屋で隣の席に座っていたのが、この住職さん。本来なら煩悩から解放されているはずの人が、なぜかパチンコ台に向って怒鳴っているという図はシュールですねぇ。でも、爪切男さんの悩みを真剣に聞いてくださる方でもあるのです。

頻繁にお遊びの遺言書を書き、毎年クリスマスに死にたくなるとウソをつくオカマ。
そして、人生のどん底にいたわたしを救ってくれたオカマ。

 上司に連れていかれた新宿2丁目のお店で出会ったトリケラさんという女装のオカマ。口は悪いけど心優しい方なのです。年老いた母親と二人暮らしで、彼女の介護もしつつお店に出ています。彼女も爪切男さんにとってとても大事な人です。

 

 こんな両極端のようなお2人だけど、困った時に掛けてくれることばの優しさも、含蓄あるアドバイスも、とても似ているのです。この2人のおかげで、彼女がいなくなって精神的に追い詰められていた爪切男さんは、何とか生き延びてきたのです。

 いろんな辛い思いを乗り越えて、「住職、僕はもはや、人間じゃないのかもしれません」とまで言えるようになった彼は、これからも下世話な世界で生きていくのでしょう。

 苦手なことだって、嫌いな人だって、世の中にはたくさんあるから、そういうものは避けていこうとする人が多い今の世の中で、敢えて面倒くさい方へ突き進んでしまう爪切男さんは実に面白い奴だなと感心してしまうのです。

2168冊目(今年188冊目)

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