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『月まで三キロ』 伊予原新

月まで三キロ

伊予原新(いよはら しん)

新潮文庫

新潮文庫の100冊 2021

38回新田次郎文学賞 受賞

 そんなはずじゃなかったんだよ。仕事だって家庭だってうまくいくはずだったのに、どこかで何かがずれてしまって、それからはずっと悪い方にばかり進むようになってしまって、気がついたら自殺するしかないと思うようになってた。死に場所は樹海にしようと思ったんだ。あそこは有名だからね。タクシーの運転手さんに、そっちへ向かってくれって言ったら、それは無理だって、その代わりにいい場所があるからそこを紹介するって。「月まで三キロ」という標識には驚いたよ。えっ、そんなに近いわけないじゃないかって思ったんだ。

 星のこと、宇宙のこと、火山のこと、こんなに理系に詳しい作家さんって珍しいよねって思っていたら、専門は地球惑星物理学の学者さんだったんですね。

 

 どの作品も、不器用な生き方しかできない人が主人公です。うまくいかないことが多くて人生をあきらめちゃっていたり、自分なんか何の役にも立ってないなんて思いこんでいたり。そもそも、自分の人生が変な方へ転がってしまったのは何故なのかもわからないするんだけど、でもまじめに生きている人たち。

 世渡りがうまくできなくて、悩んでいる人って世の中には大勢いるんだけど、そういう弱音を吐かずにみんながんばっちゃってるから、こんなにダメなのは自分だけって思いこんでしまいがちなのよね。誰かにちょっとボヤいてみるだけでも気が楽になるのに、それができない、それをしちゃいけないと思い込んでるまじめな人、それが普通の人なんだと思います。

 家族って一番近くにいる人のはずなのに、本当のことを言い合えない関係なのは何故かしら?ホンネを言い合うこともなく分かれてしまうのは何故かしら?

 全然知らない人との、ふとした会話で救われるのは何故かしら?

 やっぱり人間はひとりでは生きていけないってことなのよね、きっと。

 

 この6編が収められています。

・月まで三キロ
 もう生きていてもしょうがない、富士の樹海で自殺しようと思ってタクシーに乗った男に、運転手は意外なことを言った。

・星六花
 アラフォーの独身女性。もう結婚なんて無理かな?と思ったところに現れた人と、雪の結晶の話で盛り上がる。

・アンモナイトの探し方
 お祖父さんの家で暮らすことになった僕は、アンモナイトを探している不思議な男の人に出会った。

・天王寺ハイエイタス
 ブルースギタリストだった叔父さんは、今はすっかりどうしようもない不良じーさんになっていた。

・エイリアンの食堂
 日替わり定食があるのに、いつも違う定食ばかり頼むあの女性は、どんな仕事をしている人なんだろう。

・山を刻む
 主婦業はどんなに頑張ってもほめてもらえない仕事。そんな生活に疲れてわたしは山登りに出かけた。

2193冊目(今年213冊目)

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