『五つ数えれば三日月が』 李琴峰
日本にずっと暮らしていると当たり前として気にも留めないことに、台湾生まれの李さんは不思議さを感じるのです。日本にはあるけど台湾にないもの、台湾にあるけど日本にないもの、似たようなものはあるけどどこか違うもの、そういうものをたくさん見つけてしまうのです。
日本に滞在する期間が長くなるにつれ、そんな差に慣れてきてはいるけれど、やっぱり違うなと思うところが色々あるのでしょう。
「5つ数えれば三日月が」で、台湾で夫の両親と同居する友人との話の中に、その微妙な感じが出てきます。実家にいたころの季節の慣習を懐かしく思い出すこともあれば、両親とうまくやってこられなかった苦しさを思い出すこともあるのです。
「セイナイト」の主人公はレズビアンであることを両親から非難され、もう故郷に帰ることはできないのかもしれないと思っているのかもしれません。多少の不便さはあっても東京での暮らしの自由さを選んでいる自分。でも、この生活がいつまで続けられるのかという不安も抱えているのでしょう。
こういう思いが「ポラリスが降り注ぐ夜」になっていったのかしら。
この2編が収められています。
・五つ数えれば三日月が
台湾人のわたしは、日本の大学院で学び、日本の企業で働いている。その学校で一緒に学んでいた実桜は台湾で日本語教師として働き、台湾人と結婚した。5年ぶりに会うことになったのだが、何を話していいのか思いつかない。
・セイナイト
絵舞とわたしは新宿2丁目のポラリスという店で出会った。
2225冊目(今年245冊目)
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