『戦争は女の顔をしていない 2』 小梅けいと
「戦争は女の顔をしていない 1」では、戦争で戦った大勢の少女の証言が語られました。この本でも、もちろん彼女たちの話が中心ですが、この本を書いたスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチの気持ちが多く語られています。
従軍した女性たちを訪ねインタビューするのは、とても大変な仕事です。つらい記憶を呼び戻させることになってしまうので、語るのを嫌がる人もいるし、逆にあれもこれもと話してくる人もいます。2人で話をしているときには、当時の素直な気持ちを話してくれるけれど、そこに第三者が存在すると、急に建前論になってしまうこともあったり。男性がそばにいるだけで本当のことが語れなくなったりしてしまったのです。
銃弾を馬車で運んでいた女性はこう証言しました。
馬というものは決して死体を踏みつけたりしないの。でもスターリングラード近郊では、あまりにたくさんの死体が転がっていて・・・
馬ももうよけないんです。
食事係の女性は兵士たちが戻ってくるのを待っていましたが、
戦闘のあと、誰も生き残っていないことがあったの。
大釜いっぱいスープを作ったのに、誰も食べてくれるものがいないってことが
つらい戦争の体験を話してくれる女性たち。その思いを必死に封じ込めてきたけれど、スヴェトラーナと話をするうちに、とめどもなく話が続くのです。本当は誰かに話したかった、誰かに真実を伝えたかった、そんな思いがあふれ出してくるのです。
本を作るときに、インタビューの内容を確認すると、あれは違う、ここはカットしてくれなどと返事が返ってきます。あんなに必死に訴えた思い出なのに、世間に出してはいけないという気持ちがどこかからか出てくるのでしょうか。彼女たちの心は今でも揺らぎ続けていることに、著者は心を痛めます。
様々な反対や圧力もありましたけど、スヴェトラーナは「戦争は女の顔をしていない」を出版しました。だって、今までの戦争の記録はすべて男性が書いてきたものだから、それだけでは真実は語られていないのですから。
この内容をマンガで描いた小梅さんに感謝します。
そして、この真実をひとりでも多くの人に知ってもらいたいと心から願っています。
2236冊目(今年256冊目)
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