『いつも来る女の人』 片岡義男
喫茶店に行く理由はいろいろあります。一番正当だと思われる理由は「珈琲を飲みに行く」ということだけど、それだけのためにわざわざ足を運ぶということはまずないのです。珈琲を飲みながらボーっとしたい。珈琲を飲みながら本を読みたい。珈琲を飲みながら考えをまとめたい。お店のマスターと話をしたいという人もきっといるでしょう。
珈琲自体が目的でなく、人と会うために喫茶店に行くこともあります。打合せという口実で外に出たいからかもしれないし、外で人と会う方が話が進むと感じているのかもしれません。
デートの一休みで行くときもあるし、喫茶店に行くこと自体が目的のデートというのもあります。
この本に登場するライターや編集者の人たちは、様々な理由で喫茶店へ足を運びます。私鉄沿線のちょっとこだわりのある珈琲を飲ませてくれる店だったり、神保町の裏道の店だったり、どこの店であっても、きっと深煎りの珈琲がおいしいお店なのでしょう。片岡さんがよく通っている店なのかもしれません。
小説を書こうとしている人たちの会話を読んでいると、なるほど、こんな風に書いていったら意外とサラサラっと書けちゃいそうだなって気分になってきました。特別な事件なんか起きなくたって、日常を切り取ることで物語は進行していくんだなって感じです。
片岡さん足繁く通う喫茶店では、きっとステキなマスターが珈琲を淹れてくれるのでしょう、なんて想像をしてしまう本でした。
この8編が収められています。
- イツモクルオンナノヒト
- あとがきを書いてください
- 金曜、雨模様、気温8度
- 黒いニットのタイ
- ただそれだけ
- レモネードとあさりの貝殻
- どしゃ降り餃子ライス
- ミネストローネ
2220冊目(今年240冊目)
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