『女学生手帖 大正・昭和 乙女らいふ』 内田静枝 弥生美術館
図書館で見つけたこの本のページを開くと、大正・昭和の乙女たちの世界が広がってきます。
当時の少女たちの胸を焦がした少女雑誌「少女倶楽部」「少女画報」「少女の友」「令女界」など、どの雑誌も少女向けの小説やおしゃれのためのページが満載で、こういう情報が少なかった当時、少女たちは何度も何度も読み返したのでしょうね。
表紙や挿絵は抒情的な画風の先生たちが毎回登場していました。高畠華宵(たかばたけ かしょう)、中原淳一、松本かつぢ、加藤まさを、蕗谷虹児(ふきやこうじ)。美少女のイラストを切り抜いたり、壁に張ったりして楽しんでいた方も多かったようです。
当時の学校は男女別でしたから女学校の生徒には男女交際などという発想すらなかったのです。宝塚のような疑似恋愛の世界を繰り広げていた少女雑誌を読めたのは、恵まれた家庭の少女だけだったでしょう。でも、こういう世界感に共鳴できる人は今も大勢いると思います。巻末の嶽本野ばらさんが寄稿された文章には、そんな気持ちが溢れていました。
男装の麗人、水の江瀧子(ターキー)や小夜福子、葦原邦子のポートレイトを見るとカッコよくて、ジャニーズや韓流を追っかけている今の女の子たちと当時の女学生の気持ちって、ほとんど同じなんだなって思えてきました。だから葦原邦子と中原淳一の結婚って、それはそれはセンセーションなニュースだったんだなってことがわかります。わたしが知ってる女優・蘆原邦子は普通のおばちゃん役だったから、若いころは大スターだったんだっていうのが、ずっとピンとこなかったんですけど、やっと納得できました。
弥生美術館へ、また行ってみたくなりました。
2245冊目(今年265冊目)
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